2007年8月16日木曜日

飛行機 3

[ラガールディア2]

フランクフルトから帰った翌朝、キニコがオハイオに遊びに行くので、ラガールディアに送りに行くことになっていた。

しかし私が夜に家に帰ると、間もなく航空会社から電話があり、翌朝のキニコの便はキャンセルになったとのこと。その日私も、着陸してから2時間、ルフトハンザの機内で待たされた。空港のシステムがダウンしたとか。きっとその影響でのキャンセルだろう。

夜の便に変更したと言われたが、オハイオ到着が夜中になるので、1日遅らせて、朝の便に変えてもらった。

翌々日の朝のこと。6時半に家を出て、7時に空港に到着、まずはキニコを降ろして、私は駐車場へ。出発時刻は8時半なので、十分に時間はある。車を停めて、キニコのところへ戻ると、すっかり手続きを済ませていると思っていたのに、なぜかまだ長い荷物のチェックインの列の後ろに並んでいる。

「なんで、イージーチェックインしなかったの?」

「やったんだけれど、出来なくて、係りを呼んだら、『便が変更になっているから、ここでは出来ない、こっちに並べ』って言われたの。」
私だったら、便が変更になったのは、そっちのせいでしょ。さっさか、チェックインさせてよ、と交渉するところだが、娘は素直に長い列の後ろに並んだらしい。

暫く待って、ようやくカウンターが目の前に現れた。
「ま、出発は8時半だし、時間はあるね。」

「ママ、何を言ってるの。8時のフライトだよ!」

ぎょえ。時間を勘違いしていた。でも時計を見たら7:25。
大丈夫、ぎりぎり間に合う。

すると、キニコの順番。

「このフライトのチェックインは、もう締め切られました。次もその次の便も満席ですが、とにかく次の便にスタンバイしてください。」

えーっ?!

なんでだよー。自分たちが遅延するときは、幾らだって乗客を待たせるくせに、こっちがちょっと遅れただけで、締め切りだとぉ?

「だって、まだ35分あるんですよ!」
「でも、2時間前に来ることになっています。」
「そんなこと言ったって、あっちに並んでたら、こっちに並べって言われて、1時間前にはここに居たのに!」
「でも、2時間前には来ることになっています。」

「自分たちが遅れるときは・・・。」 ううん、そんなことを言っても始まらない。「どうせスタンバイするなら、この便にスタンバイさせてよ!」

「あなたは、どなたですか? あなたが乗客ですか?」
「私は、この子の母親です!」(こんなときだけは、母親面をする。でも「母」という言葉に、結構アメリカ人は弱い。)

「35分あって、乗れないなんて絶対におかしい!」
「静かにしてください。静かにしなければ、港湾局員を呼びますよ!」
空港は港湾局の管轄で、ここでは警察の役割も果たすのだ。

「むむ。分かったわよ。静かにするけれど、ひとつだけ質問させて。」
「どうぞ。」
「この子の席を、他の乗客に与えたでしょ?」
「いいえ。」
「じゃ、まだ空いているって言うの?」
「そうです。」

大嘘つきめ。絶対にダブルブッキングしていたに決まっている。私が前夜なまけて、自宅からのチェックインをしなかったから、今朝の段階ではもう席がなかったのかも。しかも、キニコのチケットは私のマイレージで取った無料の航空券だし、優先は低いに決まっている。

煮えくり返る腹を抱えて、しかたなく引き下がった。とにかくキニコはスタンバイすると言うので、セキュリティーに向った。スタンバイする場合は、乗れるかどうか分からないので、預ける大きな荷物も持ったまま、セキュリティーを通らなければならない。

キニコは預けるつもりだったので、ローションや洗顔石鹸、歯磨き粉やシャンプーなどの「液体」を、大きなボトルのまま鞄に詰めていた。それらは全て没収となるはずだったが、セキュリティーのお姉さんが優しい人で、「これは、ここに置いておいてあげるから、乗れなかったら戻っておいで。」と言ってくれたそうな。キニコが、「母が空港にいるので、渡したい」と言うと、キニコはもう外には出られないので、お姉さんが自ら、私に手渡しに来てくれた。あー、なんと心温まる話でしょう。

次の便、その次の便まで待って、それでも飛べなかったので、あきらめてキニコは帰ることに。

その間、私はずーっと空港で待っていた。フードコートのプラスチックの硬い椅子に腰掛けて、コーヒーを2杯。お尻が痛くなった。ブックストアを見つけて中に入る。革張りの椅子があるではないか! よし、本を買って、ここで読もう。色々選んでいると、気に入った本が3冊もあって、50ドル近く使ってしまう。ようやく革張りの椅子に腰掛け、リラックス。キニコの様子を探ろうと、携帯を取り出すと、あれれ、ここは電波が届かないじゃないの!

仕方なく柔らかな椅子をあきらめて、再びフードコートの硬い椅子へ。本を読む。でも、どうしてもお尻が痛くなって、お腹は空かないけれど、昼時だし、隣のレストランへ。皮のソファーに腰掛けて、食べたくもないピザを注文。少し手をつけたピザがすっかりさめた頃、キニコから「もう、あきらめた」と電話。

さて、帰ろうと駐車場から車を出すとき、あれれれ・・・、駐車券がない。携帯を出し入れしたときに、落としてしまったみたい。出口で、「失くしました」と言うと、超嫌な顔をされた。当然、最高額の30ドルを支払うことに。でも単に罰金を払うだけじゃ足りないみたいで、免許書や、車の名義証書まで提示しなければならない。手続きに時間がかかり、列を成した後続の車にクラクションを鳴らされる。すみません・・・。

30ドルは悔しいけれど、空港には7時間居たわけだから、まともに駐車代を払っていても24ドルだった。よし、殆ど元は取っている、と、悔しさ半減。

しかし腹が立つなぁ。飛行機に乗れないお陰で、駐車場30ドル、本50ドル、コーヒー10ドル、ピザ20ドル、と散財させられたのだ! 

「そんなの、飛行機のせいじゃないじゃない。だいたい、もともと、ママが30分間違ってた訳だし。」
7時間も待ってあげた優しい母に、娘は手厳しい。

(翌朝、夫の運転で、無事に娘はオハイオへ飛び立ちました。めでたし、めでたし。)

飛行機 2

[フランクフルト]

空港のセキュリティチェックが随分と厳しくなって、X線の手荷物チェックを受けるに当たって、コンピュータは鞄から取り出し、液体は、大きい容器のものは没収されるから、小さい容器に入ったものだけをまとめてジプロック(チャック付いたビニール袋)に入れて、やはり鞄の外に取り出す。自分も靴とジャケットを脱いで、ベルトも外して、チェックポイントを通る、なんてことはもう慣れっこになっていたものの、フランクフルトからの帰りのセキュリティーチェックには、たまげた。

フロリダで休暇をちょっと楽しんだ後、急にフランクフルトでの仕事が出来て、直接出かけたのだが、その帰りの話。

アメリカ国内では、いつも手荷物でOKだったキャリーオンバッグが、「大きすぎる」と言う理由で、ルフトハンザでは持込みが許してもらえない。
「えー、今までずっとキャリーオンでOKだったんですよ。アメリカの航空会社とは違う基準なの?」
「多分。」
「えー。それに、これ、クルー用バッグの規格で、ほら、ほら、あそこのクルーも持ってるでしょ?」と食い下がった。
「でも、あなたは、クルーじゃないでしょう。」
ごもっともで・・・。

渋々、預けることにしたけれど、
「あなたはラッキーよ。今日はエコノミーが満席で、ビジネスにアップグレードされました」と言われて、すっかり機嫌を直した。(やっぱり粘り勝ち?)

で、ゲートに赴くべく、セキュリティーを通る。セキュリティーは長蛇の列。でも私はビジネスだから、みんなよりはずっと短い、別の列に並ぶ。るんるん。

しかし、これが遅々として進まない。勿論、エコノミークラスの列も全然進まない。30分ほど並んで、ようやく自分の番になって、謎が解けた。

コンピュータや液体を外に出し、ジャケットを脱ぐのは、いつもと同じ。ベルトと靴はなぜか、着用したままOKだったけれど、時計は外さねばならない。でも、これがノロノロの原因ではない。

問題はコンピュータ。X線を通ったコンピュータは係員が取り上げ、持ち主が荷物をまとめ、身づくろいするのを待って、別室に連れて行かれる。

そこで、コンピュータの周りの「火薬チェック」が行われるのだ。小さな布をつけたプラスチックの棒で、周りを拭いて、その布だけを特殊な機械に通す。

ビジネスやファーストに乗るビジネスマン・ウーマンは、たいていコンピュータを持っている。故に、どうしても時間がかかる。だいたい、とっくにボーディング時間になっている乗客が殆どなので、あるオジサンは大声で怒鳴りだし、警察に取り囲まれていた。

やっとこさ、セキュリティーを抜けて、出国手続きをする。さて、ゲートは、と見渡すと、ゲートがない。私のゲートを指す矢印の先には、セキュリティーがある。

あれれ、間違った入り口から入ったのかな? 仕方なく、「ゲート28には、どうやって行くのですか?」と尋ねると、「このセキュリティーを通るんだよ。」
「え、だって今さっき、セキュリティーを通ったばかりです。」
「もう1回あるの。」
えー??
 
てな訳で、コンピュータの火薬チェックを除いては、全て同じ手順で再びチェックを受け、ようやくゲートか、と思いきや、その前に再び改札みたいなものがある。航空会社のお姉さんたちがが、乗客のパスポートとボーディングパスを再度チェックしている。

むずむず。
どうしても質問したくなって、聞いてみた。
「ひょっとして、この先のゲートは全部アメリカ行きの便だけ?」
「そうです。」

なぁるほど。アメリカ政府から、「1人たりともテロリストを入れるな!」と厳しく言われて、真面目に対応しているんでしょう。

ゲートに到着したときは、既に出発時間を過ぎていた。でも案の定、遅れている。
私は、無料の飲み物と食べ物にありつこうと、フルトハンザのビジネス用ラウンジに向ったのでした。るんるん。

飛行機 1

昨今は、飛行機の遅れなんて日常茶飯事。遅延もなく、ハプニングもなく、まともに飛んで着陸したら、ラッキー!と思わずにいられない。いや、記憶にある限り、全てスケジュール通りに行ったことなんて、ここのところないなぁ。

と言うわけで、飛行場でのエピソードなんて特筆するほどのこともないけれど、それでもちょっとユニークだった体験を綴りましょう。

[ラガールディア1]

マイアミへ出発する際のこと。空港に着くと、空港の入り口からカウンター前まで、人、人、人で埋まっている。あれほどの混雑は、今までに体験したことがない。まるで感謝祭前の空港のような混み具合。

で、すぐ近くにいた女性に尋ねた。
「はて、今日って、なんか特別の週末でしたっけ?」
「さぁ・・・どうしてこんなに混んでるんでしょうねぇ」と彼女も首をかしげる。

すると、隣にいた男性が、「昨夜の飛行機が、天候で全てキャンセルになったんだよ。」

なるほど、それでこれだけの人が。

私たちは、イージーチェックインだから、何重にも列を成している人たちの後に並ぶ必要はない。

イージーチェックイン(航空会社によって呼び名は異なる)とは、Eチケットを持っている人が、カウンターとは別の場所に設置された、キヨスクと呼ばれる複数のコンピュータディスプレイから、セルフチェックインが出来るシステム。手荷物しかない場合は、ここでボーディングパスがプリントアウトされるので、カウンターへは行かず、そのままゲートに進める。

最近は、数日前に航空会社から、チェックインサイトへのリンクのついたE-mailが送られて来て、自宅でそこからチェックインして、ボーディングパスを印刷しておけば、空港到着後は何もしないで、直接ゲートに赴くことも出来る。

しかし、どちらの場合も、預ける荷物がある場合は、やはりキヨスクにて、預ける荷物の個数を入力し、荷物に付ける目的地のシールが、カウンターにある印刷機からプリントアウトされるので、そこで荷物を預ける必要がある。

私たちは、既に家でチェックインは行っていたものの、預ける荷物があった。見れば、キオスクの周りも人で埋まってはいるけれど、誰も使用していない。そこで、私は人並みをかき分けて、ようやく画面の前に陣取った。

そこまで辿りつくまで、生真面目なシナコは、「ママ、順番抜かししないで! ちゃんと並ばなきゃ!」と背後から叫んでいる。

「違うの、この人たちは、セルフチェックインの人たちじゃないの!」と言っても、シナコには分からない。説明するのももどかしく、とにかく荷物のチェックインを済ませたが、今度はその荷物を実際に預けに、カウンターにまでたどり着かねばならない。

カウンター前は荷物を持った人でびっしり埋まっているので、なかなか近寄れない。それでも強引に前進していると、またもやシナコが叫ぶ。「ママー!ちゃんと並びなさいよ!!」

「違うよ。この人たちは荷物をチェックインする人たちじゃないんだよぉ!」後ろを向いて、叫ぶ。

実際、チェックインする人たちに紛れて、キャンセルされたフライトから、別の便に予約を変更しようと並んでいる人たちがいる。彼らが、ようやくの思いで、カウンターに到達すると、「ここでは予約変更はできません。予約係りに電話するか、あちらのカスタマーサービスに行ってください!」と、つれなく宣言されるのがオチなのだ。

それでも、ここまで並んだのだから、と食い下がる乗客。ここでは、どうにも出来ません、と言い放つ係員との間で押し問答。係員は後ろに並んでいる人たちにも、「ここでは予約変更は出来ませ~ん。予約係りに電話してくださ~い!」と叫ぶけれど、ざわつくカウンター周辺には、その肉声も届かない。

そんな中、私はボーディングパスを振りかざして、「○○(苗字)です。荷物のチェックイン!」と叫ぶ。

後ろから、シナコが「ママ、止めて!ちゃんと待ちなさいよ!」

「待ってたら、いつまでたっても順番が来ないのよ!」

ようやくの思いで、荷物のチェックイン・シールを貼ってもらう。

真横では、若い女の子が泣いている。「ここまで待ったのに・・・。今日中に帰らなくちゃいけないのに・・・。」 気の毒に。

そのまま荷物を預かってくれるかと思いきや、「あちらのカウンターに持って行って下さい」と、遥か向こうの別のカウンターを指差す。

何で?!と思うけれど、しかたなく、再び人と荷物で埋もれたところを、荷物を引きずり、掻き分けて、別のカウンターへ。は~、疲れた。

2007年8月3日金曜日

オーランド

一昨日、マイアミでの仕事を終え、最終の仕事はオーランドなので、お客様と同じ便で移動。

実は、キニコとシナコも同じ便に乗り、私と同じホテルの部屋に泊まる予定。

出張に家族を連れて行くことは、アメリカではそう珍しい話でもないけれど、こんなこと、なかなか日本から来た人には理解してもらえなさそうなので、黙っていたほうが得策かなと、子連れで来ていることは内緒。「他人の振りをすること」と、子供には最初から釘を刺してあった。

当日、私は仕事場から、お客様と一緒の車で直接マイアミ空港へ。キニコとシナコは、ホテルからタクシーで空港へ。

空港のカウンター周辺や、ゲートでも何度も顔を合わせたが、そ知らぬ振りを通す。飛行機に乗り込むと、偶然にも私の横がお客様の1人。もう1人がその真後ろの座席で、何とその隣の2席がキニコとシナコ。

二人は事の成り行きにおかしくて、くすくす笑っているし・・・ひやひやものでした。シナコが私と似ていると言われることもあるので、気付かれるかも・・・と思いつつ。

オーランドの空港からホテルまでも、私はお客様のタクシーに同乗。キニコとシナコも別のタクシーで、無事にホテルにチェックイン。多分ばれてないでしょう。

しかし、今回は普段使い慣れていない言葉が多くて、お客様にしょっちゅう訂正されましたわ。

「地方政府」と言えば、「地方自治体ですね。」

「・・・あのぅ、家の所有者の集まり、あの・・・アソシエーションって言うんですが・・・」
「あ、ホームオーナーズ・アソシエーションね」 (なんだ、知ってるの・・・)

おまけに、「郡」と「軍」って言葉が、しょっちゅう出てきて、私の頭の中には、漢字が浮かんでいるけれど、聞く方にはわからないだろうから、いちいち、「XXXX郡」と長ったらしい名前をいい、「軍隊」と言い直し。おまけに、ついつい「群」って字をノートに書いて、「あらら・・・」と書き直していたら、脳みそがそれに奪われて、聞き逃していたり。

夕食の時、二人のお客様の部署の関係を説明してもらった時、
「二人とも国家公務員で、元は彼女もボクと同じところにいたのですが、今は彼女は東京で仕事しているんです。日本語で出向って言うんですが。」
と、「出向」を説明され、そこまでわたしの日本語って粗末だったのかしら・・・と、愕然。

ま、最後には、「大活躍でしたねー。とっても助かりました。」と、嘘でもいいから言ってもらえて、楽しく仕事を終えた昨日でした。

さ、今日からはバケーションだっ! 今夜、夫もNYから参加し、明日からはパーク巡りの始まりです。