2008年4月30日水曜日

アメリカの大学事情20 <おしまい>

このシリーズも「20」となり、きりがいいので、今回でおしまいにします。(ぱち、ぱち、ぱち・・・)

キニコの進路は、ほぼ決まりました。先週の日曜、夫と私でキニコの高校まで車で出かけ、近くのレストランで話しました。

夫:   「で、どこに行きたいの?」
キニコ:「ホプキンズかディキンソン」
夫:   「じゃ、ホプキンズは金銭的に無理だから・・・」

と、ディキンソンにあっさり決まり。ただし補欠のミシガンに合格したら、ミシガンに行く、ということになった。

口を挟まないと決めていた私だが、「ママは、こうしろとか言わないことにしたから言わないよ。でも、なぁー。クラークソンだったらなぁ。で、ベッカはどうなったの?」

ベッカは最終的にクラークソンに決めたとのこと。彼女は、キニコが補欠になった優秀者プログラムに入り、奨学金もかなりもらい、最終的に年間に支払う金額がたったの7500ドルなのだそうだ!!
 
「その代わり、車を買ってもらうんだって。中古だけれど。」
「そりゃそうだ、ママだってキニコがクラークソンだったら、車買ってあげたよ。」

破格の奨学金は、ベッカのお兄ちゃんもクラークソンだと言うこと、そして収入と大学生が二人いる家庭という経済事情を考えれば、差があって当然のこと。これはキニコの問題ではない。

ただ「なんで優秀者プログラムに補欠になったのか、解ってるんだ。」と、キニコがこの日初めて説明したのを聞いて、私は超不機嫌になってしまった。

キニコがクラークソンに行きたくなかったのは、多分、優秀者プログラムに確実に入れる保証がなかったから。ところが、補欠になった理由が、そのコースを希望するに当たって提出したエッセイをクラークソンに受け取っていないと言われ、再提出しなければならなかったのに、ちょうど春休み中だったため、陸上部のキャンプに参加していて期限に間に合わなかったからだと言うのだ。

私がむっとしたのは、ぎりぎりに提出したためにこんな事態になったこと。そして、一事が万事この調子の娘が、人生の大事な局面に際しても、同様だったこと。それでみすみす15900ドルを棒に振ったと思うと、腹が立ってしかたなかったのだ。

「あー車も買えたねー。2台は買えたわ。新車だって! あーあ、大学院のお金は出せないって言ってるけど、クラークソンだったら、その差額分を大学院に回すってことだって可能だったのにさ・・・。あーあ!」と、ぶつぶつ言い続けたら、とうとう夫が、「お前はしつこい!」

そこで今度は夫婦の口論に発展。

「わかった。でもパパが約束したんだから、学費はパパが出してね。」
「でも、お前も協力してよ。」
「するけど、約束した額しか出さないからね。」
「何でそう言うわけ。できるだけ協力してよ。」
「でも確約はしない。約束した額は出すけど、それ以上はわからない。」
「なんで、そう言うわけ。そうか、お前は自分の稼いだ金は自分の金ってことなんだな。」
「そうだよ。いざ離婚したときのために、ちゃんと取っておかなくちゃいけないからねっ!」

レストランのお客もちらちら私たちを見ていた。
キニコは、会ったときからずっとぶすっとしていたのだが、目の前でお金のことで喧嘩されても、我関せずという体で、相変わらずブスっとしていた。

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この大学騒動の間(まだ終わったわけじゃないが・・・)、親にとっても子にとっても、本当にストレス一杯だった。振り返って今、心から反省している点がひとつある。それは、キニコが大学に合格したというお祝いムードがゼロだったこと。考えてみると「おめでとう!良かったね!」という言葉は一度もかけてやらなかった。「おめでとう、でも、決まったわけじゃないから」ずっとこんな言い方をしていた。

子供が大学に合格したのに、喜びは一切なくて、口をあければお金、お金。キニコもやるせなかっただろうなぁ・・・。とても可哀そうなことをしたと思っている。

週末に帰宅するので、そのときに謝ろうと思う。(ちゃんと聞いちゃくれないだろうけど。)

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キニコとしてもかなり疲れたらしく、「考える時間が必要」として、ギャップイヤーを取ることに決めたと、日曜日に私たち告げた。学校の先生も推奨していて、どのプログラムに参加するかはまだ決めていないが、取り合えず入学のタイミングを1年遅らせて、1年間は学校から離れて別のことをしたいらしい。「そのほうが、大学に入ってから、勉強に専心できるから」とキニコは言う。そうなるかどうか解らないが、疲れているのは確かなので、ここは本人の自由にさせることにした。

基本的には、ギャップイヤーのために出すお金はないとしながらも、別れ際に夫が、「でも、少しぐらいなら出してあげられるかもしれない」と言っていた。これを聞いて、なんだかほっとした。やっぱり私たち、甘いのかなぁ。

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ディキンソンかJHUかで、まだ迷いがあった時、私がJHUに電話をして確認した事項がある。
参考までに、下記がそのときのQ&A。

Q: FAの決定は、経済的状況のみを考慮したものなのか。生徒のレベルも考慮の対象なのか。他校からはオファーをもらっているが、何故差が出るのか。

A: レベルは全く関係なく、経済的状況のみを考慮したもの。他校がどのような判定基準を使用しているかわからないが、連邦政府の奨学金とは違い、学校からの奨学金の場合は、学校ごとに判定基準が違う。JHUの基準に照らし合わせて、お宅にはFAは出せないと決定した。既に今年入学者へのFAの枠は使い尽くしたので、この決定は翻らない。

Q: 将来、家庭の経済状況が変わった場合には、見直しはされるのか。帰国後、大幅に収入が減ることが見込まれるが。

A: もちろん見直しに値する変化があった場合は、見直しはされるが、1年生の入学時にその学年へのFAの割り当てが決めら、必ずしも見直しされるという保証はないので、入学時の学費を4年間支払う覚悟を持って、入学を決めてもらわなければならない。

Q: 将来、兄弟姉妹が大学に進んだ場合の、学費負担はどのようになるのか。長子が100%払い、次が30%などの負担割合になるのか。

A: 学費負担は、兄弟姉妹の間で等分される。大学生の子供が二人なら、Familiy Contrubutionをそれぞれに半分ずつ支払う形になる。

Q: もし、今年はJHUに行くことを断念し、将来途中編入を希望する場合、一度JHUに合格したことは考慮に入れられるのか。
A: 編入率は、8%であるので、非常に低い(厳しい)。

Q: Harvard、Yale, Stanfordなどの大学では、FAの見直しがかけられている。JHUは今年はそういった方針の変更がなかったようだが、将来的にこういう動きがある可能性はあるか。もしその場合に、対象はその年の新1年生だけなのか、全員が対象になるのか。

A: 現在、見直しがかけられている大学は、寄付金規模のかなり大きな大学である。本校の寄付金規模を考えると、恐らくそういった動きはないであろう。万一見直しがあったとすれば、全員が対象となる。

Q: 学生が、被扶養家族ではなく、経済的に独立していると考えられるのは、どのような状況か。
A: 連邦政府の法律で、1. 満24歳になったら。 2. それ以前は、結婚すれば。

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と言うことで、「結婚は遅いほうがいい」と言っていた私だが、できちゃった婚でも何でもいいから、早く結婚して欲しいかもしれない・・・。ただし、孫の面倒は見ません!

2008年4月24日木曜日

シナコのSweet Sixteen

シナコの16歳の誕生日は先週の17日だった。

誕生日に先立つ数日間、シナコが私に何度も迫った。

「ママ、シナコもSweet Sixteenのパーティーして欲しいんだけど、幾らまでだったら出せる」
「Sweet Sixteenのパーティー? そんなの、キニコにもしてないし、我が家にはそう言う風習はないの。日本人の文化じゃないんだから。」
「でも、コレで最後だから。いいでしょ、お願い。パーティをして。幾らまでなら出してくれる?」
「最後って、これからも、アンタが結婚したら、そのパーティとかだってあるんだよ。」
「結婚パーティーなんて要らない。やるなら自分で出す。だいたい結婚するかどうかだってわからないのに。」
「自分でなんて、出せるわけないんだよ。その時になったら頼ってくるでしょ。ママだって、全くお誕生日パーティーしてあげないって言ってるわけじゃないでしょ。家にお友達を呼んで、ピザを注文して、ケーキ食べてのお泊り会なら、幾らでもやってあげるって言ってるじゃない。」
「イヤだ、こんな家、狭すぎるもん。人を呼べないよ。ソファーベッドだって壊れてるし。」
「寝袋使えば、寝られるじゃない。この部屋に、テーブルの上と下に一人ずつ・・・・・・5人は寝られるでしょ。あっちの部屋にも何人か寝られるし、キニコの部屋もある。なんだったら、パパとママがどこか豪華ホテルに泊まりに行ってあげるよ。ひっひっひー。」
「こんなところ、寝れないよ! それに、ここで何するのよ。お願い、一生のお願いだから。幾ら出せる?」
「一生のお願いったって。うーん、頑張って200ドル。それ以上は出せない。」
「えー、200ドルじゃ何もできないよ。」
「できるよ、ピザを注文できるじゃん。」

何せシナコはしつこい性格なので、上記の会話が延々ぐるぐるぐるぐる続くのである。

さて、シナコのお誕生日当日。その週は春休みで、シナコは午前中陸上部の練習に参加した後はずっと家でだらだらしていた。

「シナコ、今日はパパは出張だし、特別に何か食べたかったら言ってね。」
「お寿司。」
「じゃあ、マンハッタンまで行かないと美味しいのは食べられないよ。一緒に行こうか?」
「めんどくさい。じゃあ、何でもいい。」
「え、何でもいいんなら、じゃ、ピザを取って二人で食べようか?」(すぐ、自分が楽な提案をする。)
「どうでもいい・・・。」
「じゃ、決まり、ピザねっ!」(るんるん)
と言ういことで、私は食事の用意もせず、夕方がめぐってきた。
にわかにジョダが吠え出す。何じゃらほいと外に目をやれば、シナコの友達が、風船とケーキを手にドアの前にいる。

Happy birthday! と叫んで、マリアとロッティが家に入ってきた。
全く予期していなかったので、シナコは大喜び。

そして、二人も一緒に、約束どおりピザを注文し、ケーキを食べた。

その後、3人は一切れのケーキを手に、近所に住むアディティの家におすそ分けに行った。その後戻ってから、Wiiで11時ごろまでひとしきり遊んで、とっても楽しかった模様。
本当に二人のお陰で、シナコの誕生日は、一転してとっても思い出深いものになった。(ありがとー!!) 本当、持つべきものは友達だね。
以来、シナコはパーティーの「パ」の字も言わなくなった。

キニコがJHUを断念したことで、「可哀そう・・・」と言っていたから、少しは関係しているのかも。

民主党候補のデッドヒート

キニコのことで注意を削がれ、民主党の戦況にもあまり注意を払っていなかったが、火曜日のペンシルバニア州での予備選挙では、ヒラリーが勝ち、またしても今後の行方が予想不可能に。

そもそもヒラリーへの支持が多いペンシルバニア戦ですら、オバマの追い上げが報じられていたので、ヒラリーちゃんも、もはやこれまでかと思っていたのに、意外な結果にいよいよ両者の勝敗はスーパーデレゲートの手に委ねられつつある。

これまでスーパーデレゲートの数ですらオバマの追い上げが報じられてきたのに、これも先行き不明の模様。こうなると共和党に有利になりかねないと、民主党内でも早く方向性を決めたい焦りが見えるが、8月末の民主党大会にまでもつれ込むのか。

個人的には、もうヒラリーちゃんに勝たしてあげて、オバマさんは副大統領か、8年後の選挙に出て頂戴と言いたいところ。さてどうなりますやら。

アメリカの大学事情19 奨学金の傾向

21日付けのウォールストリートジャーナルで、大学の学費についての記事が掲載されていた。「嗚呼ハーバード」で書いたハーバードやイェールに続いて、スタンフォードなどでも同様の学費負担の見直しがかけられているようだ。

記事によると、スタンフォードの場合、年収が100,000ドル以下の場合の学費負担はゼロ。MITおよびダートマスの場合は、75,000ドル以下の場合で無料となる。こうなると、例えば年収が9万ドルでカリフォルニア州在住の場合、ハーバードに進学すれば授業料は6300-10,300ドルのところが、州立のUCに進学すれば25,000ドルとなってしまう。

優秀な学生が州外の私立に流れることを懸念してか、ニューヨーク州のある上院議員は、「中流家庭は州内の大学に進学する際、収入の1割以上の学費負担を強いられるべきではない」との提案を州政府に提案したらしい。 彼の言う「中流」とは、年収150,000ドルまでを指す。

金利が高く、卒業後にローンの返済ができない生徒が増える中、学費負担の見直しのひとつとして、学生ローンの削減もある。数十校が、これまでローンとして学生に貸与してきた分を、全額グラント(無償の奨学金)に置き換えている。コーネル大学の場合は、2008年度の入学者でグラントに置き換えたのは年収6万ドル以下の場合のみだが、来年度からは、このラインを75,000ドルまで引き上げ、75,000ドル~120,000ドルの収入の場合は、ローンの上限額を3000ドルとした。

こうした学費負担の見直しおよび削減を実行した大学は、これまでに全米に2500校以上あるの4年制大学うちでわずか50校のみ。

過去5年間の4年生の私立大学の学費上昇は、インフレ分を差し引いても14%。更に公立大学ではこれが34%に上っている。こうした状況の中、逆に大学の寄付金が大幅に増えていることから、アメリカ政府も現状の見直しにプレッシャーをかけているようだ。現在、寄付金総額が10億ドル以上ある大学の1割が、ここ10年間で寄付金額が倍増している。寄付金規模が5億ドル以上の大学が全米では130校以上あるそうだ。

USNewsでトップ25校に挙げられた大学の中で、寄付金10億ドル以上に名を連ねるのは:
ハーバード(292億)、イェール(179億)、スタンフォード(140億)、プリンストン(134億)、
MIT(83億ドル)、
コロンビア(59億)、ミシガン*(55億)、UPenn(53億)、エモリー(50億)、
ワシントン(47億)、シカゴ(46億)、ノートルダム(44億)、コーネル(43億)、
デューク(39億)、ライス(39億)ダートマス(33億)、UCバークレー*(33億)、
ヴァンダービルト(29億)、UVA*(24億)、ノースウェスタン(23億)、JHU(22億)、ブラウン(21億)。
(*は州立。ただし州立大学の学生数は私立に比べてかなり多い。)

さて、こうした流れの中、今後この学費負担の見直しが他校にどう影響していくか、私の一番の関心事だが、ハーバードやイェールのような大幅な学費負担カットを敢行できるのは、「寄付金規模が50億以上の大学だけであろう」と書かれていた。また学生のローン負担をゼロにできる大学も、多くて全米の5%、つまり125校止まりとの見通し。そこまで寛大に振舞えるだけの寄付金を持つ大学は、それほどないので、今後は大学レベルの格差がますます広がるのかもしれない。

ところで何故アメリカの大学にこれほど寄付金が集まるのか。ひとつには世界各国から優秀な人材が集まるために、成功する人たちが多いということ。成功の規模が、諸外国に比べてずっと大きいということ。だが本当の理由は税金だと私は見ている。収入の中で、寄付金は非課税となる。つまり節税対策になるのである。しかも単なる節税にとどまらず、寄付をして自分の名前の入った図書館でも建ててもらえれば、宣伝・売名にもなるのだ。

*****

さぁて、キニコの話。本来なら今日がJHUのオープンハウスだった。「行くのか行かないのか決めて連絡して」と再三メールを送ったり、留守電にメッセージを残していたのに、全く返事がなかった。行くのであれば、ここから車で4時間のボルチモアだから、私としてはそれなりの準備が必要だったからだ。

昨夜とうとう電話があり、「行っても、無駄だから行かない」とのこと。多少はまだ後ろ髪を引かれているものの、更にファイナンシャルエイドの担当者にあって直に交渉したり、質問したりするガッツもないよう。「あの学校に行けば、頭のいい子ばかりで、自分は底辺をうろうろするだけかもしれない。それよりディキンソンに行って、上のほうにいける努力をする。そうすればよい大学院にいける。今は大学院のレベルが勝負だから。で、ディキンソンには行けるの? ブリンモアは、学校はきれいでご飯もおいしかったけれど、変な人ばかりだから行きたくない。受かれば、ミシガンがいいけれど、多分無理と思う。クラークソンは田舎だから行きたくない。」

キニコの話を聞いていて、正直言って、ガッツがないというか、情けない気がした。と思いつつも、半分は自分のレベルを解って現実を見据えているとも思える。いずれにせよ本人が納得すればそれでいい。ただ、ディキンソンで上にいける? 彼女の性格から、してそれはなさそうだけど。

取り合えずディキンソンのファイナンシャルエイドの担当者には、ワークスタディーができるか、あるいはキャンパス内で仕事ができるか問い合わせているらしい。多分前者は無理だろうけれど、仕事は必ずできるはず。

ブリンモアからはまだ最終回答はないが、もう行かないと決めたようだ。本当に変な学生ばかりなのか、逆にキニコの方が変なのかは別として、学校に行ってみて、その雰囲気が自分に合うかどうか、入学前に確認できるオープンハウスは意義があるように思う。

取り合えず、私はかなりすっきりした。そして「最終的に、どの学校に行けるか行けないかは、パパと話して欲しい」と言いました。「相談には乗るけれど、ママは決められないから」と。ちょっと突き放したようだけれど、今回は私主導では決めたくないから。

一応キニコのメッセージは、コロンビアにいる夫にメールで伝達。
「わかった。でも大学院に行かせる金なんかないよ。キニコには4年分しか出せませんとはっきり言っておいて」だって。私の返事。「言っておいて、じゃなくて自分でキニコと話してね。」

どうしてこの親子は私を介そうとするのだ。できるだけ私は介入したくないのに。あー、やっぱり最終的には私がいないとだめってことか?

2008年4月21日月曜日

アメリカの大学事情18 キニコの運命やいかに

たった今、郵便が届いた。

JHUのアピールに対する回答と、同じくディキンソンに対するアピールの回答。

まず、JHUの手紙の内容。

「再検討いたしましたが、残念ながら今回はJHUからの補助をオファーすることはできません。
多くの親が、奨学金や補助金を除いた残りの額のすべてを、PLUSローンから借りています。JHUは直接に貸付する大学ですので、銀行から借りるのではなく、連邦政府からの直接ローンとなります。ウェブサイトをご参照ください。
また私的な奨学金を得ることで、学費の負担を軽減することができますので、こちらのほうもご検討ください。
9月には、本学の学生就職課にて仕事先の斡旋も行います。キャンパス内外の仕事を斡旋しています。」

世の中そんなに甘くないと言うこと。
PLUSローンの利率は8.5%。超高い! もし、毎年20,000ドル借りたとして、4年で80,000ドル。チャートを見ると、10年返済で、月々990ドル。まだ家のローンだってこれから20年足らず近く続くというのに。無理。
これでJHUの夢は消えた。

次はディキンソンからの手紙

「下記の補助金を授与することになりました。全部または一部を受けることが可能です。
残額は、家族または本人の負担となります。多くの家族がローンまたは月払いオプションを利用しています。」

と言う文章の下に、

学費の内訳
授業料             $38,234
寮費                $9,600
本、その他の学内の費用   $1,000
個人的費用(小遣い、旅費)  $1,000
----------------------------------------
合計 $50,344

補助金
スカラーシップ(返還の必要なし) 7,500
連邦政府Staffordローン     3,500
---------------------------------------
合計 $11,000


同じく、世の中甘くないってことだわ。残り39,444ドル。気が遠くなる。おまけに毎年5%の授業料の上昇を考えると・・・。
Staffordローンも6.8%。3500ドルを4年間借りると、14000ドル。
15000ドル借りた場合の返済期間は最長10年で、月々の返済は173ドル。新卒には何とか払える額か。

************

とにかく、今回の大学進学に関して、私はもうできるだけのことはした。この後の最終的な決断は夫に任せることにしている。

過去4年間のキニコの授業料を払うのが大変で、そのために夫婦喧嘩も絶えなかった。「お前があんな学校に行かせるから・・・」と夫には言われ続け、私としてはかなりストレスだった。だから、キニコの学費に貢献しないとは言わないけれど、今回はストレスにならないように、彼に決めてもらおう。

残るはブリンモアからの奨学金の回答待ち。こちらもやっぱり望み薄。
あと1週間ほどで、結論がでるでしょう。

(私的にはクラークソンがいいなぁ。金銭的にも魅力的だし、キニコがやりたい生物学の研究の施設も整っている。そんでもって、一番近い都会がカナダのオタワらしいので、フランス語も捨てがたいキニコには、うってつけだと思うんだけど・・・。)

今日のムカつき

NHKの朝のニュースで、防衛庁の守野 前事務次官が法定で次のように謝罪したと言う。

「・・・という身分でありながら、こういうことになってしまい、まことに申し訳なく思っています・・・」

こういうことになりぃ!? 
あんた、この期に及んで、まだ認識間違ってるんじゃないの?
なり、じゃないでしょうが。こういうことをしてでしょうが!

法定にいたら、絶対に思わず立ち上がって叫んでいたわ。あー、ムカつく。

2008年4月20日日曜日

ちょっと休憩

まじめな話が続いているので、ここいらでちょっと笑いを。

夫は「めちゃイケ」が大好き。週末は近所の日本食品店に足繁く通い、新しいめちゃイケのDVDが入っていると必ず借りてくる。私は夫ほど熱心ではないのだが、観るとやっぱりこの番組はおもろい。

で、昨夜見たのが、「イケ面」芸能人を集めた「期末テスト」。珍回答にお腹が筋肉痛になるんじゃないかと思うほど笑いこけた。今朝おきて、再度観て、また笑った。

東幹久の英語の回答が超級で面白かったから、YouTubeにあったら、おすそ分けしたいと思ったんだけれど、残念ながらアップロードされてなかった。あー誰か是非是非YouTubeに載せてくれないかなぁ。

検索した結果、過去の「テスト」からのクリップを見つけた。これも以前にビデオで観たけれど、面白かった。海外暮らしが長くて、めちゃイケをご存知ない人もいると思うので、そのクリップをリンクしておきます。笑ってください。

http://jp.youtube.com/watch?v=XBVpHa3BIJU (和訳編)
http://jp.youtube.com/watch?v=F43GcHsmnPk (英作文)
http://jp.youtube.com/watch?v=luTzFDQS-hI (英単語)
http://jp.youtube.com/watch?v=3Om-8vp0COg (理科)

2008年4月19日土曜日

アメリカの大学事情17 浪人

シンガポール商人(あきんど)さんより、「受験浪人」というものはアメリカにないのか?という質問が寄せられたので、お答えします。

答えは「ない」です。ただ、違った意味での浪人は存在します(後述)。

私の偏見を許してもらえるなら、日本の受験とアメリカの受験、と言うより、現在の日本の教育の中身とアメリカの教育の中身は、何に焦点を当てているか、その大きな違いを考えると、日本の場合は、「良い大学に入り、良い就職先を得る」こと。アメリカの場合は、「何を勉強するか」だと思う。

意図的に現状が生み出されたわけではないだろうが(さりとて、現状を改革しようという意気込みも感じられない)、事実上、日本の場合は大学に入ることができるなら、小・中・高の授業を通して、何を学ぶかなんて中身はどうでもいい。とにかく受験に成功するための事項をひたすら覚え、コツを学ぶべはそれでいい。ここで学んだ内容が、どう役に立つのかは示されず、学ぶ課程の面白さなんて無視されている。

私の偏見は、自分の高校時代の記憶に基づくものだが、決して高校時代が楽しくなかったとは言わない。むしろめちゃくちゃ楽しかった。それは、授業の外での活動や友達づきあいのこと。

授業は、「面白い」「興味深い」と感じたものは、唯の一つもなかった。授業を通して学んだことは殆どないんじゃないか。日本史なんか、その最たるものだった。授業中、席順に当てられていく。内容は、教科書にそった質問。「XX年に起きたのは、次、Aさん。」「でその次に起きた事件が、はい、次、Bさん。」「その事件で殺されたのが、はい、Cさん」・・・という具合。

私は日本史専攻じゃなかったし、こんな授業で興味をそそられるはずもない。自分の番が回ってくるまでは、せっせと隣のミーコに手紙を書き、ときどきフトシが入れる茶々に耳を済ませて、笑いは逃さぬようにし、日本史の教科書を立てて、その下で世界史の勉強をした。自分の順番が近づくと、にわかに教科書に目をやり、取り合えず答える準備。わかりませんと言わずに、答えようとする辺りが、根がまじめと言うか、小心者と言うか。

一方、アメリカの学校の授業は、知識を授けられるところであり、様々な見方や考え方を学ぶことから、自分なりの考えを打ち出して、それを人に伝える方法を学ぶところ。

同じ歴史の授業でも、ひたすら過去の出来事とその年代を暗記することに終始した授業とは違い、一般にアメリカでは、何故そういう事件が起きたのかその背景を考え、それが他のどの出来事にどう影響を与えたか、これらを自分なりに考察することに重きが置かれている。それ故、教科書から離れて、その出来事に関連する書物を読み、エッセイやレポートを提出する宿題が多く出される。(狭く深い授業であるから、石器時代から現代までをすべて網羅することがないのが不足する点かも。)

高校時代、アメリカに留学していた時のこと。当時の英語力はかなり未熟だったので、歴史で、第2次世界大戦に関連する書物を読まねばならず、あらすじを知っているからと、選んだのは、アンネの日記。それでも読むだけで一苦労だった。American Governmentという社会の授業では、生徒全員がNews Weekを購読せねばならず、その中の記事が授業のトピックとなった。当時の私には難しすぎて太刀打ちできず、殆ど読みもせず放っていたので、もっぱらホストファーザーが読んでたなぁ。確かこの授業の成績は、「評価できず」で、単なるP(パス)をもらったっけ。

数学もしかり。日本の場合は、与えられた問題をひたすら解く。たいていの場合、答えはひとつ。アメリカの一歩進んだ授業では、問題の解き方を、様々な角度から考え、発言する。数学の時間でさえディスカッションが重視されるのも、驚くべきポイントではないだろうか。

こうして学ぶ課程を重要視するからこそ、一度のテストの点数で、大学入学が左右されることはない。4年間の高校生活で、いったい(1)何を学び、(2)何を習得し、(3)どんな活動をしてきたか。その結果、(4)大学で何を学びたいのか。つまり、大学のアプリケーションには、これらを推し量ることのできる(1)と(2)に当たる履修科目とそれに対する評価(成績)、(3)に当たる課外活動、スポーツ、学校外での活動の内容、そして(4)は主にエッセイの形で提示する。


(1)の履修科目にしても、同じ数学の授業でも、卒業単位として最低必要な数学は確か代数まで。数学に更に興味があれば、微積分や統計学なども取ることができる。ただ同じ代数や微積分の授業でも、レベルの違うクラスが用意されており、通常のクラスのほか、一歩進んだAdvanceやHonorsクラス、そしてAPクラスなどがある。これは数学に限らず、音楽さえ含む殆どすべての授業にあてはまる。APはAdvance Placementの略で、大学レベルの授業。このクラスを履修すると、学年末に行われる全米標準のAPテスト(任意)を受験して、結果があるレベルをクリアしていると、進学先の大学においては、既履修単位として認められる場合もある。大学のアプリケーションには、APテストの結果も添える。ちなみに履修クラスの希望は常に通るわけではなく、それなりの成績を収めていなければ入れてもらえない。


だから、たとえオールAでも、易しいクラスばかり取っている場合には、それなりの評価しか得られない。また履修の授業数(単位数)も考慮の対象になる。

キニコの場合、確かにBのオンパレードに加えて、1年の時にはCすらあったのだが、通常は一学期に5教科履修するところを、4年間を通してずっと6教科、さらに授業も殆どがHonorsかAdvanceレベルのものを履修してきた。だが、いくら難しい授業を取っていても、授業について行けなければ意味がない。「そんなに無理しないでも・・・」と言う先生もいたが、キニコは強引に難しい授業を取り、四苦八苦。今年の「AP統計学」に至っては、後期はとうとうこの授業をドロップした。(大学のアプリケーションが終わったから、もう落としてもいいだろうという、ずるい計算があったに違いない。)

上記(1)~(4)の項目とは別に、標準テストとしてのSATまたはACTテストの結果を提出することがほぼ義務付けられている。学校のレベルには格差がある上、成績のつけ方には教師の主観が影響するので、客観的な判断材料も必要だからだ。だがSATやACTの合否への影響は限定的である。

更に、SATもACTも1回のテストの結果ではなく、何度でも受験することができる。テストはほぼ毎月行われており、たいていは11年生以降にテストを受け始める。ACTの場合は、最も良い成績を提出することができる。SATの場合は、これまで受けたすべてのテスト結果が自動的に受験大学に送られる。

高校の4年間の自分の活動すべてが、大学入試に繋がっているアメリカと、一発のテストだけで判断される日本。それゆえ学校の授業でどれほど頑張ろうと、推薦入学ででもない限り、殆ど意味がないなんて。日本の高校生は、人生で一番頭が柔らかい高校3年間の貴重な時期に、なんて無駄な時間を過ごすはめになっているんだろう。

キニコの高校も「プレップ」スクールであるから、大学進学を前提とし、それなりに進学に照準を合わせた勉強内容だ。だけどそれは、「入試」に備えた勉強ではなく、大学での学習に結びつく可能性のある授業内容なのだ。9年生から12年生の4年間は、自分がどんなものに興味があり、大学でどのようなことを勉強したいか、それらを模索し、追及するための過程としての4年間と位置づけられていると思う。

その割には、情けないことに、キニコはちゃらんぽらんだし、もひとつ大学で何を学ぼうとイメージしているのか、よくわからない。でもキニコの周りの子達を見れば、しっかりしたビジョンを持っている子が結構多い。もちろん大学で学ぶ内容が、必ずしもその先の将来を支配するわけではない。いずれにせよ、興味のあるものを見つけて、自分なりの将来を考え始める最初のステップが高校であると言えよう。

ところで、ここで日本の浪人とは少し違う意味での浪人がアメリカに存在することをご紹介しよう。ひとつはPost Graduate。もうひとつはキニコの学校でGap Yearと呼ばれているもの。

Post Graduateは公立には存在しないプレップスクール独特のコース。他の高校を卒業後(=Post Graduate)のコースで、これに編入して、1年間大学進学に向けて勉強するもの。日本の浪人の概念に極めて近い。ただこんなことをする・できるのは一部の限られた者のみ。こんなコースが存在することを知っている人も少ない。キニコの学校にPost Graduateの生徒が何人いるのだろう。12年生に組み込まれていると思われるので表立ってわからないが、いたとしても1-2人程度だと思う。

Gap Yearとは、高校卒業後にすぐには大学に進学せず、何かをすること。仕事の場合もあれば、ボランティアやインターンの場合もある。留学する生徒もいる。1年間を丸々休まず、半年だけという場合もある。たいては合格した大学に入学時期をずらせてもらう。去年卒業したキニコの友人スティーブも、大学合格後、夏休みから12月までスペインに留学し、1月から入学。キニコの学校も、「4年間猛勉強をしてきたのだから、すぐに大学に入って再び猛勉強せずに、一息つくことも大切」として、Gap Yearを奨励している。

ああ、違いはここなんだな。

アメリカでは、高校も大学も「猛勉強するところ」と位置づけられている。一方日本では、どちらも「遊ぶところ」なんだもん。少なくとも、私の場合(時代)はそうだったわ。頭が柔らかくて吸収力のあるあの時にもっと勉強していたら。そう言う思いが、私を教育ママにしていると思う。

今は、日本の大学も「勉強の場」に変わりつつあるのでしょうか。 そうだといーなー。専攻も、変更できたり、他校への編入が容易になっているといいのに。大学に入学後すぐさま、やっぱりイタリア語には興味が持てないと気づいたけれど、一からやり直す勇気もなく、未だに無駄な4年間を過ごしたと思ってます。

2008年4月15日火曜日

アメリカの大学事情16 嗚呼ハーバード!

なんでキニコはハーバードを受験しなかったんだ!
なんでイェールを受けなかったんだ!

先週、奥さんがイェール大学の教授という人に出会い、「今年からイェールとハーバードは奨学金のポリシーを変更して、年収180,000ドル(約1800万円)以下の家庭の負担が大幅に減ったんだ」と教えてもらった。

知らなかったので、今、ウェブサイトで調べてみたら、確かに去年の12月10日にハーバード大学が変更を発表している。あー、知っていたらなー。(キニコの成績じゃ、そんなの関係ねー。)

ハーバードによると、新たな方針は「ゼロ~10%スタンダード」と言い、年収60,000ドルまではの家庭の授業料負担は「ゼロ」。年収120,000ドル以上180,000ドル以下の家庭は、一律、年収の1割を負担。つまり年収が約1800万円なら、授業料の負担は180万円。60,000ドル~120,000ドルの家庭は、年収の10%より低い割合を年収に応じて負担すると言うもの。しかも学生にはローンを組ませない。いーなー、コレ!
http://www.hno.harvard.edu/gazette/2007/12.13/99-finaid.html

イェールも似たような方針で、年収200,000ドルまでの家庭の負担が大幅に軽減される。
http://www.yale.edu/opa/newsr/08-01-14-03.all.html

願わくば、今後他の私立もこのポリシーに追従してくれたら・・・。
しかし、ハーバードにしても、イェールにしても、莫大な寄付金を誇る大学であるが故に可能なことかもしれない。

ここで寄付金の規模を比較すると、(カッコ内は学部生数)
ハーバード  $29,219,430,000  (6,715)
イェール   $17,949,088,000   (5,333)
コロンビア   $5,937,814,000  (7,318)
スタンフォード $14,084,676,000  (6,422)
MIT      $8,368,066,000  (4,127)
JHU      $2,218,144,000  (5,772)
ミシガン    $5,566,433,000  (25,555)
ブリンモア    $567,458,000  (1,378)
ディキンソン   $490,547,616   (2,326)
クラークソン   $154,496,761   (2,545)
UConn     $300,000,000  (16,347)

これを学生一人頭で割ると、
ハーバード   4,351,360
イェール    3,365,660
コロンビア    811,398
スタンフォード  2,193,190
MIT      2,027,638
JHU      384,293
ミシガン      217,821
ブリンモア     411,798
ディキンソン    210,897
クラークソン    60,705
UConn      18,351

これで、いかにハーバードとイェールの2校が傑出しているかが良く分かると思う。

最初からこの計算をして、寄付金の多いところを狙うべきだった。作戦失敗。
待てよ、寄付金の多いところは、賢い学校ばかりで、結局キニコには太刀打ちできないってことなのだ・・・。

こうして見ると、改めてクラークソンは頑張ってくれてるなぁと思う。キニコみたいに勉強しない奴にたくさん奨学金をオファーしてくれて、「かるーく損」にならなきゃいいけど・・・。
(我ながら情けないオジンギャク・・・。)

アラブ人と犬

キニコが以前使っていたコンピュータが壊れ、今日修理に来てもらった。キニコが高校に入学したときに買ったデスクトップ型だが、当時60ドルを払って、自分が誤って壊しても無料で修理してくれるという、4年間の有償保証を買った。過去3年半に渡り、何の故障も起きなかくて損した気分だったのだが、春休みにキニコが寮を空けている間、どうやらお掃除の人が入って、コンピュータの本体であるタワーを床に落としたみたい。マザーボードの部品が外れて飛び出し、コンピュータが立ち上がらなくなった。

たまたま春休み中に大学用にノートブック型を購入したので、壊れたデスクトップは我が家で引き取り、今日の修理となった。それにしても、あの60ドルの保証、買ってよかったなぁ。マザーボードだけでも200ドルって言ってたから。

しかし、修理に先立ち、どこがどう壊れているか電話で説明するのが大変だった。本体から飛び出した部品の形状を言葉で説明しなくちゃいけないのだが、「メタルでできた黒い部品で、大きさは4センチx4センチ。ピンみたいなものが飛び出していて・・・全部で30本かな、縦5本、横6本・・・違った、縦4本、横5本かも。え、どこについてたか? さあ、検討もつきません。それと小っさいピンも外れてます。ユー字型で、先がとがってて、U字の先に二つのピンを繋ぐプラスチックのブリッジみたいなのがあって・・」

日本語でだって、こんな説明大変だし、聞いてるほうは何だかわかならないでしょ。これを英語でやるんだから、そりゃもう大変どした。向こうもわからなくて、
「オタクに他のコンピュータある?」

ってことで、私のコンピュータをネットで繋いで、向こうが遠隔操作で、Dellのサイトに行ってくれて、当該のコンピュータのイラストのあるページへ。「はい、この絵を見て、どこのどの部品か、マウスで指してみて」。イラストは詳細じゃないないものだから、「これは何? この隣は何? あーこれが、ここのコイツに当たるわけね・・・。なるほど・・・。あ~、わかった、わかった! これです! 取れたのはこれです!」

ようやく向こうもどこが故障しているかを突き止め、「これはシステムボードの交換ですね~。お宅の近所のテクニシャンに部品を送りますから、着いたら修理してもらってください。」 

と言うわけで、本日の修理にあいなりにけり。


外から人がやって来ると、ジョダは必ず吠える。郵便屋さんのおじさんは心得たもので、書留などをドアまで持ってきてくれるときは、必ずポケットから犬のビスケットを取り出して、ジョダコにくれる。最近では郵便屋さんを見ると、ジョダコは尻尾を振って出迎えている。

今日のお兄さんは、ちょっぴしコワモテだったので、修理している間中ジョダコが吠えても困るので、「あなたからあげて下さい」とジョダのおやつを彼に手渡した。目の前で私がお兄さんにおやつを渡しているのを目撃しながらも、馬鹿なジョダコは、お兄さんからおやつをもらったと勘違いし、以降はお兄さんが好きになり、愛想を振り舞いていた。

さて、作業に入る前に、ちらりと我が家を見回したお兄さん。玄関にあるシリアのモザイクを施した小さなテーブルを見て、「これはどこで買ったのですか?」

そこで、お兄さんの「コワモテ」の謎が解けた。彼はアラブ人なのね。アラブと聞くと、すぐさま郷愁に駆られる私。お兄さんを質問攻めに。彼はモロッコ出身のアラブ人なのでした。

そこで、ふと心をよぎった疑問。
「ねえ、アラブ人って一般的に犬が嫌いよね。それってどうして?」
ぶしつけな質問だったけど、お兄さんは素直にこう答えたのでした。

「実は僕もあまり犬は好きじゃないの。アラブ人が犬嫌いなのは、『犬のいる所には天使は来ない』とされているから。」
「へ? コーランにそう書いてあるの?」
「コーランには書いてない。」
「じゃ、迷信?」
「迷信でもない。スンナに書かれているんだ。」

スンナはモハメッドの慣行だけれど、コーランに次ぐもので、やはり守っている人が多い。スンニー派って言うのは、確かスンナを重んじる宗派だったような。(良く分からないので、スンナの詳しい説明は、ウィキペディアでも読んでくださいな。)

「へー、知らなかったー。早速ブログに書かなくっちゃ!」
「ブログ書いてるの?」
「うん、日本語だけどね。」

あー、アラブ人の犬嫌いの謎が解けて、修理も得したけど、お兄さんと出会ってブログのネタが出来て、もっと得した気分!

アメリカの大学事情15

そろそろ、このネタやめたいんですが、キニコの進学先が決まるまで続きます・・・。

本日11校の受験結果がすべて出揃った。結果は6勝4敗、1補欠。最後まで待たされたミシガンが補欠。

日本の受験だったら、合格した中から行きたい学校を選んで終わり、となるところだけれど、合格通知を受け取ってから、またひと踏張りしなくちゃならなくて、ここから先は、神頼みならず、「金頼み」なのだ。

本人の望む大学に行けないのは可哀想だけれど、これはキニコに限った事情ではなく、よっぽどの大金持ち以外は、どこでも同じ。仲良しのベッカも、ロチェスター大学に行きたいけれど、クラークソンからのオファーが多いから、このままだと後者。現在ロチェスターとの交渉中。

キニコ曰く、「学校中で一番頭がいいエレン」が、軒並み不合格になったのは、外国人学生で奨学金が必要という事情からじゃないかと言う。エレンは、ハーバードの補欠、JHU合格ということらしい。

日本では想像しがたい、アメリカの大学進学にまつわる奇妙な事情を描くために、キニコが合格した各大学との事情をここで包み隠さずお話することにしよう。

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1.JHUの場合

まずは、第1志望のJHU。最初の「ゼロ回答」に対して、アピールする書類を提出したが、現段階では、書類を送ったのみで進展なし。実は昨日、ブリンモア大学のオープンハウスで出会ったあるお母さんに、「交渉は実際に会ってしたほうが良い。しかも本人主導でやるべき」と言われ、早速キニコはJHUに連絡すると言っていたが。来週の金曜日がJHUのオープンハウスなので、その時に奨学金の担当者との面会を取り付けようと言うのだが。それ以前に、アピールに対する最終回答が大学から送られてくるんじゃないかと・・・案じている。

2.ブリンモアの場合

さて、キニコの第2志望校であるペンシルバニア州にあるブリンモアという女子大のオープンハウスがこの週末にあった。2日目には私も参加した。オープンハウスとは「説明会」で、キニコは前日から泊りがけで、授業に出席したり、寮に泊まって、学生や教授と交流し、キャンパスライフをちょっぴり味わったのだ。

私がブリンモアに出掛けた目的は、もちろん奨学金の交渉。ブリンモアではFAFSA(連邦政府の奨学金)の申し込みを行っていることが奨学金対象者となる前提条件。ところが、社会保障番号のないキニコは、2度も申し込みを行ったのに、2度とも申し込み書が返送されてしまった。申し込み書を出す前に、再三FAFSAに電話で確認して、社会保障番号がなくても大丈夫と言われていたのに。2度目の申込書が返送されたのが先週の金曜日。社会保障番号のほうも、グリーンカードを申請した時点で同時に申し込みをしていたのだが、6週間を過ぎても届かないので、問い合わせたら、「申し込まれていません」とのこと。先週の火曜日、キニコを学校から連れ出し、慌てて再申請を済ませたところだった。

そんな事情で、最低条件のFAFSAの申請が完了していない事情を説明する必要があった。ところが、「これは本校のルールです、現状ではゼロですね」との冷いお言葉。更に「我が家は家賃分、収入が膨らんで見えます。家賃とそれに対する税金分は収入から引いてもらわなければ、実情を反映したものではない」と言うと、「じゃあ、それを抜いたら収入は幾ら?」と聞かれ、大体の額を伝えると、「うーん、これで行けば、奨学金は、6000ドルですね。」 愕然。6000ドルなんかじゃ状況は変わらない。ブリンモアも学費と寮費、その他の手数料を加えると48000ドル。教科書代を入れると49000ドル。どうやら第2志望も望みなさそうだ。

ひとつだけ喜ぶべきことは、家に戻ると、郵便受けにキニコの社会保障カードが届いていた!特別に早くプロセスしてくれたのか、とても早かった。昨夜、早速オンラインでFAFSAの申し込みを完了。それでも、我が家の特別な事情を考慮してくれない限り、もらえて6000ドル。無理っ。

3.ディキンソンの場合

ブリンモアに先立ち、先週の金曜からキニコは、同じくペンシルバニア州にある1783年創立のディキンソンという大学のオープンハウスに参加。同級生のリズが両親と参加するので、一緒に連れて行ってもらった。リズは既にこの学校に行くことを決めている。リズとキニコは、1年生の時のルームメート。当時ご両親の職業を聞いてびっくりした。「お母さんは弁護士、お父さんは科学者なんだって。」科学者なんていう職業、初めて聞いたよ。あぁ、リズんちは学費で頭を悩まさずに済む数少ない家庭なんだろうなぁ。

ディキンソンに話を戻すと、この学校からの奨学金回答は同じくゼロだった。そこで学校に電話し、我が家の台所事情を説明して再検討してもらうことになった。同時に、厚かましくも、「あの~、うちのキニコはメリット(成績優秀者)奨学金の対象にはならないでしょうか?」と尋ねてみた。聞くのはタダだからね。

担当者は、キニコの願書と成績を見ながら、
「・・・う~ん・・・B、B、B・・・・、たまにC有り・・・。お母さん、確かに学校のレベルが多少高いのは分かっていますけど、この成績ではねぇ」と、(そりゃ、厚かましいよ)と言わんばかりのニュアンス。
「ですよね~」と私。
「でも、キニコさんは、何か劇をプロデュースしたんですか? Toy StoryとかHerculesとかありますが。」
「ああ、あれですね。友達を集めて、何か上演したらしいですけど、詳しいことは知らないんです。」
「そうですねー。こっちの方面で可能性があるかもしれません。Performing Artの奨学金があるにはあるんですよね。でも、この程度では、どうかな・・・。でも、ま、本人と話してみましょうか?」
「それは、それは、ちょっとでも可能性があれば、是非ともお願いします」と、自然と電話の前で、もみ手をする私。
と言うことで、キニコは、この担当者と話をし、エッセイを書いて、今は、メリット奨学金がもらえるかどうかの回答待ち。(極めて望み薄し。)加えて、経済面での奨学金も再考してもらっているが・・・結果はいかに。

4.クラークソンの場合

ベッカのお兄ちゃんが行ったクラークソンというNY州にある小さな大学。授業料が3万ドル弱。寮費を加えても4万ドル弱と「破格」に安い。(これで破格に安いというところがもう感覚もオカシイ。)ベッカにもかなりのオファーをしてくれているようだが、キニコも15000ドルのオファーをもらった。正直言って、これだけで私はこの大学に決定!と思っているのだ。

この大学からは、Honors Programを志望するように推薦され、そのためのテストを受けたが、結果は「補欠」。キニコは、このプログラムに参加できるならこの大学に「行ってもいい」と、大きな口をたたいている。んなら、補欠じゃなくて、正式に合格しろよ!

5.マイアミ大学の場合

名前は州立っぽいのだが、私立。ファーストオファーは8000ドル。授業料と寮費を合わせて42000ドルなので、8000ドルでは無理。だけどアピールはしていない。何故か? キニコは興味はあるらしいけど、私が興味ないので、ノーアクション。フロリダなんかでまともに勉強なんかできっこないよ。ビーチで遊ぶのが落ち。行きたきゃ自分でアピールしろってんだ。ってことで、キニコは知らないが、既にこの学校は対象外。

6.コネチカット大学の場合

すべて合わせて18000ドル。州立だから、奨学金は望めない。ここに素直に行ってくれたら話は早いのだが、キニコの中では対象外。

7.ミシガン大学の場合

もしもミシガンに合格したら、ここが第2希望となるらしい。が、州立だから、奨学金は望めないだろう。すると学費と寮費を合わせた38000ドルを丸々払わなければならない。結果が分かるのは、5月以降になるだろうから、よそへのデポジットを払った後。うーん、微妙。

++++++

と言うことで、当たって砕けろ。別に交渉して失うものはないので、できるだけ食い下がろうと思ってはいる。それにしてもお金の話は気が重い。キニコは自分でもローンとワークスタディーで学費の一部を負担するつもりでいる。それは是非ともそうしてもらわねば。6.8%の利息は高いけれど、自分で払っているという自覚が、まじめに勉強させるのじゃないかと、浅はかな母は考えている。

ところでワークスタディーでは、支払いが直接大学に行くのかと思ったら、そうではなく、やはり学生個人に支払われるらしい。キニコだと、ぱっぱらぱーって使っちゃうんじゃないか。普通の学内でのアルバイトとの違いは、税金。つまりワークスタディーには所得税がかからないそうだ。

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ところで、ブリンモアの奨学金説明会で聞いた話。

ブリンモアでは、「年々上がる授業料対策として、初年度に4年分全額支払うオプションがあります。去年から授業料は5.5%、寮費は4.4%上がりました。毎年上がることはあっても、下がることはありませんからね」だって!どこの誰が、一気に4年分払うねん!と思ったら、「去年は6名いました」だってさ。銀行で定期にしてもそのくらいの率だと思うから、そんなに得だとは思わないけど、とにかく、あるところにはあるのね~。

そこで、質問してみた。「まったく、何の奨学金も受けていない生徒ってどのくらいるんですか?」
「まったく何も受けてない生徒が25%、ローンやワークスタディーだけの生徒を合わせると40%くらいです」。ブリンモアは小さい大学で、学生数が1400人弱。その4分の1の350人が、500万円の授業料がフルで払える家庭だとは・・・。はぁ~。

コメントについて

コメント欄に書き込みがあると、たいていは書いた友達の顔が浮かぶのですが、先日、まったく誰なのか、想像もつかぬ名前と内容のコメントがありました。

コメントだけを読めば、ブログの内容に通じないわけでもないけれど、さりとて、いまいち意味不明でもある。名前にはネットがリンクされていたので、「誰だろう・・・」と思ってクリックしたら・・・と、とんでもないサイトにリンクされていたのです!

「げっ、これで何か悪いものに感染したか・・・」と心配しましたが、たぶんその手のものではなさそう。恐らく、手当たり次第ブログを見つけて、いい加減なコメントを書いてはリンクを張って「宣伝する」アルバイトなのかと思います。が、とにかく破廉恥な許せない内容でした。


気づいたのが早かったので、恐らく善良な皆様のお目汚しをする前に削除できたとは思います。ただ、そのコメントのみを削除することができず、ブログと、既に書き込まれていた善良なコメントをも、一旦削除し、コピペをして複製しました。


このような事情から、今後は、皆様のコメントは、これまでのように即時には掲示せず、一旦私のほうで内容を確認してから掲示という形を取ることにしました。ご了承ください。

ブログをお持ちの方は、気をつけてね。

2008年4月14日月曜日

学校教育について(2)

私はマンハッタンに住むA子さんという美容師にいつも髪を切ってもらっている。先日、久しぶりにA子さんのもとを訪れ、ヘアカラー(ふん、早い話が、白髪染めさ)とカットをしてもらった。A子さんにはナイジェリア出身のご主人との間に小学生と幼稚園の二人の息子がいる。二人ともマンハッタンの公立に通っている。マンハッタンの公立教育は、Pre-Kから始まる。日本流に言えば、Pre-K(年中)、 K(年長)、 1年生となる。

A子さんから面白い話を聞いた。マンハッタンの彼女の学区では、ほとんどの小学校がひとつの建物を二つの学校で使用しているとのこと。つまり、ひとつの建物に別々の小学校があり、校長も二人、職員室も別々、教室も別々。ただし、体育の教師と保健室は共同で使用しているとのこと。

別々の学校というのは、単に便宜上二つに分けられているのではなく、教育方針も違うとのこと。また、彼女の住む学区内には10余りの小学校があり、この中のどの学校にも通うことができるそうだ。人気の高い学校の場合は、希望が通らないこともあるそうだが、基本的には、親の方針に合わせて、学校を選ぶができるのだそうだ。

A子さんの息子たちは、アートに力を入れた学校を選んだそうである。もうひとつの理由は、他の学校の幼稚園は午前中に終わってしまうが、ここは小学生の授業が終わる3時まで、幼稚園も見てくれるので、仕事を持つA子さんに取って、重要な要素でもあった。さらに、在籍する生徒の人種や民族の種類も一番豊富で、これも大きな要素であったらしい。同じ学区の中にはかなり勉強熱心な学校もあり、そちらには中国系の生徒が多いとか。

公立学校で学校により方針が違うこと、また学区内で選択肢があるなんて驚きだ。親の方針も子供たちの特性も違う中で、こうした選択肢の幅の広さも日本の学校に反映してもいいんじゃないかなぁ。スポーツに重きを置いた学校とか、演劇とか、音楽とか・・・。基本的な勉強時間を犠牲にしないで、余った時間を特別な学習や練習に当てることは十分に可能だと思うんですけど。関西だったら、お笑いに焦点を当てた小学校ってのもいいなぁ。

学校教育について(1)

「地頭力」に対する反響のすごさ(コメント2つでってか?)には、やはり現在の日本の教育方針に対しての庶民の憂いを反映してますよね。

私も今の日本の教育に対して、思うこと、言いたいこと、たくさんある。政治に対しても同様。そして、私の言うこと=多くの人が思っていること、であるにもかかわらず、なーんにも変わらない。そして人々は安直に、公立学校を離れ、私学に向いてしまう。私学に入れるにはお金がかかる。だから子供の数も一人、二人が限度。よって少子化スパイラルは止まらない。

先日、NHKで、公立高校で「塾」を導入している例が紹介されていた。ちらちTVを見ていただけなので、詳しい内容は知らないけれど、放課後や休日に別途費用を払えば、塾の授業を安く学校で受けられるのだとか。はぁぁぁ?? それって学校の先生が教えられないから、代わりに塾の先生に教えてもらっているってこと、つまり自分たちの能力のなさを認めているってこと?

今の教育の現場を見れば、一概に教師ばかりを責められない。先生が悪いというよりは、システムそのものが機能していない。もうずいぶん前から言っていることだけれど、教育を改善するためには、まず最初に教師の給料をうんと高くすることだ。「教師」という職を魅力のあるものにし、良い人材を確保することが、すなわち教育の質を向上させることにつながる。

私の偏見を容赦してもらえるなら、今現在、教職に身をおいている人たちの中で、本当に「教師になりたい」と熱望してなった人たちがどのくらいいるだろう。私が大学生だったころ、教職課程を取っていた友人たちは、教師になりたいからではなく、万一のときのオプションとして、教職を取っていた。そして就職活動時期が近づき、当時は就職難でもあったから、多くの人がその「オプション」を行使したことは間違いない。

何故、教師がオプションなのか。それは明らかに収入の点で魅力が少ないからだ。ただし教師になって気づいた。「恩給」というオイシイ手当てがあったし、お互いを「XX先生」と呼び合う同列社会で、「上司」といえるのは、せいぜい教頭と校長くらい。評価したりされたりする上下関係も、同僚との間で競争もない、独立独歩の世界。法律を犯すようなことさえしなければ「解雇」の憂き目にあうこともなし。

よりよき教師になるための努力をするかしないかは、あくまで本人次第。努力を仕向けるプレッシャーもインセンティブもない中では、幾ら心がけの良い人々でも、怠けてしまうのは責められない。また、より良い教師になるべく努力しても、その努力はほぼ評価されず、逆に生徒の親から非難を浴びたときの負のインパクトは大きい。そんな中でとにかく「事なかれ主義」に走り、大胆な方針も打ち出せないでいるのではないだろうか。

シナコは中学1年の夏休みから2年の夏休みの1年間だけ、日本の学校に在籍した。帰国直後はすぐ近くの公立中学に編入。両親とも公立で12年間を過ごしたので、実際に公立の状況を体験するまでは、当時の日本の公立に対して、今ほどの偏見も憂慮もなかった。しかし入ってみると、日本の教育経験がゼロの娘に対して、勉強の点におけるフォローはゼロ。アメリカの公立では、授業に遅れのある子どもには、多少のヘルプがあっただけに、余りの何もなさに唖然とした。テストの点数のつけ方も、往々にして一元的だった。テストの最中、問題の意味がわからずに聞いたシナコの質問は無視された。答えはわかっていただけに、解説が受けられなかったことを親子で悔しがった。中には英語で書いた答えに丸をくれた先生もいたのだが。

編入後まもなく、授業参観と学年懇談会に参加した。授業内容は私たちの頃と変わらない、先生が当てた子だけが答える、生徒参加型とは到底言いがたいもの。一方的に先生のペースで授業が進められていく。オハイオの補習校の授業のほうがずっと和気藹々としていた。これは生徒がアメリカナイズされいるからだろう。

懇談会では、1時間の予定のうち50分間は、ずっーと運動会と音楽会のビデオを見させられた。ふたつの行事は家族も見学できたので、どちらも既に生で見ている人たちがたくさんいたはず。私は音楽会を見てなかったとは言え、何が悲しくて、硬い教室の椅子に座って、わが子を数分見るために、よその子のパフォーマンスを延々見なくちゃいけないのか・・・と思っていた。ようやくビデオが終わり、教室に電気が灯り、学年主任のお話だ。ところが、彼が話したのは、「この学校では、互いに友人の家に泊まりあうことを禁じていますが、夏休みにそのルールを破った生徒がいたようです」に始まり、「携帯電話で変なサイトが送られることがあるので気をつけるように、という注意だけで終わってしまった。

私が期待していたのは、今年はどんなことを学習していくかという教育の中身についての説明だった。それがまったくなし、生活面の話だけで終わるなんて。生活は家庭での教育でしょ、学校は勉強を教えるところじゃないの。こんな懇談会でみんな満足しているわけ? よその家庭はそんなことを学校に期待しているわけ?

この懇談会で私が結論付けたことは、とにかく3年間、問題さえ起こさずにいてくれれば、たとえ何も学ばずに卒業しても、学校はそれで満足なのだ、と言うこと。残念ながらこの教育方針とも呼べぬこの方針に私は非常に不満を覚えた。とにかくシナコを「学ばせたい」と思った私は、まずは家庭教師を探すべく、近所の人たちに相談を始めた。その時に、ある人から、近くの私学が帰国子女を受け入れていること、とても教育熱心な学校であることを教えてもらった。

果たして、シナコは3学期からはその私学に編入した。私学に編入後、学長のお話があった。彼の話は、まさに彼の「教育方針」についての話であり、いかに子供たちを学ばせるかということに対する彼の情熱が伝わってきた。あぁ。「やり方に文句があれば、別の学校に行ってください」と言える私学でないと、教える側も自由に教えることができないのだと、そのとき感じた。

2008年4月3日木曜日

地頭力

今、クローズアップ現代で企業が「地頭力」のある人材を求めている・・・という特集をやっていた。
「地頭力」とは、最近話題にされている能力らしい。

私に言わせれば、何も今になって注目される能力でもなんでもなく、要するに、経験に基づいて考える力およびその考えを表現することができる力でしかないと思うのだ。

英語ではRaw ThinkingとかCreative Thinkingとか言われているらしい。前者は新しい言葉だけれど、後者は別に新しい言葉でも何でもない。この二つの言葉の意味が同じということなのだから、求められているものも、やはり新しい素質でもなんでもない。

地頭力を持つ人材を開拓するために、企業の面接試験では、突拍子もない質問が出されているそうだ。日本のマイクロソフトでは、「富士山を動かすにはどうすればよいですか」、別の会社では、「日本では年間何個の鍋が売れますか」「ドラえもんのポケットから何を取り出したいですか」などなど。

正直言って、こんな質問してどないするねん? 会話のトピックとしては面白い。どのように回答するか、答えの内容よりも、これを題材に広がる会話のほうは面白いとは思う。

ニュースの解説の言葉の中に、「学校の成績は関係なく」地頭力のある人材が求められている・・・とか。

この言葉に私は非常に反論したい。学校の成績が関係ないって? 
確かに、穴埋め式のテストの点数は関係ないかもしれない。大化の改新=645年、関が原の合戦=
1600年、仏教伝来=ゴミヤの拾った仏=538。(情けないが、私の日本史の力はここまで。)
こんなこと覚えていても、こんな風にジョークに使う以外何の役にも立たない。重要なのは、何故この時期にこんなことが起きたか、その背景を理解すること。数式にしても、その数式を使って、現実のどのような問題が解くことができるかわかること、理科の知識も、それが実生活にどのように結びついているかが、面白さの元になると思うのだ。

正直言って、学校に行っている間は、これらの知識が受験以外の何の役に立つのか全然わかっていなかった。誰も教えてくれなかった。実生活との接点が見出せずに、単に勉強のための勉強だと思っていたから楽しくなかった。

ところが大人になって、身の回りの至るところに学校で学んだ知識が役立つ事象が埋もれていた。いや、学校で学んだではなく、学びそびれた知識が役に立つことがわかって愕然としたと言った方が正しい。

通訳として口に糊する身になってから、物理や化学が密接に関係する分野の仕事に携わる機会が多くなった。高校時代、理科と数学は不得意中の不得意。数学と化学は高校入学直後にあった実力考査で順位は全校で下から一桁だった。未だに記憶しているが、数学では、問題を解きながら、因数分解の公式が正しいのかどうかわからなくなって、何でこういう因数分解になるんだっけ・・・と考え始めそれで時間切れ。化学も出題された問題数は多くなく、中でも問題数が多かったのが、「下記の化学式を書きなさい」というものだった。「下記」の中に含まれていたのは、水、酸素、二酸化炭素・・・もっと難しいものも含まれていた。

数学では、簡単な説明の後に公式を覚えて、その後はひたすらその公式に数字を当てはめて解いていくというのが通常の授業。確かに公式を覚えてしまえば手っ取り早いが、何故その公式になるのかを理解していない限り応用力はつかない。ま、私みたいに、不必要なときに、一人で応用力を試そうとする奴は馬鹿でしかないけれど。

化学では「化学式」という言葉がわからなかった。「あ、例の手をつないだ形を書くのかな・・・」と思い、水は「H-O-H」と書いた。知っていたのは、2,3個だったから、書いた「絵」も2-3個だったが。

でも、結果はすべて×。化学式と聞かれたら、H2OとかO2と言う答えを書かなければならなかったのだ。そのときは、「あー私は馬鹿だー。化学は苦手なの~。下から数えて10位にも入らなかったよー」とみんなに自慢して回った。

以降、私は数学も化学も苦手、勉強するに値しないと決め込んだ。私の高校では理科の4科目(生物、地学、化学、物理)のうち、文系の生徒は2教科を1年間勉強するだけで良かったので、私は記憶力だけで何とかなる「生物」と「地学」を取った。文系の生徒はほとんどこの教科を選択するし、先生も「こいつらは理科に興味のない学生」と決め込んでいるものだから、授業も超退屈。たいていは教科書を前に立てて、その陰で、「あいつ(先生)のシャツ、昨日と一緒。どうりで彼女ができないはず」などと、友達に回すメモを書いて過ごしていた。

でも今になって、仕事で化学や物理の世界に遭遇し、なんて面白いのだろう、と思う。当時、この分野の面白さを知っていたら、今頃私はエンジニアになっていたかも・・・と大胆不敵な考えさえ頭をよぎる。

クローズアップ現代のゲストとして出ていた糸井重里氏。彼は「地頭力」をこんな風に解説した:個人が持つ知識の総合、これを元に、協議・検討を繰り返し、さらに新しい考えを生み出していくこと。この言葉に、私は思い切り拍手喝采した。

ゼロからは何も生まれない。多くの経験と背景知識を基に、先のことを考える力や自分の考えを肯定する自信が生まれて来る。そのためには、学校の成績は大切なのだ。いかに真剣に勉強に取り組んだかを表すものだから。

問題なのは、今の日本の教育が大学入試だけに焦点を絞っていること、および成績の評価の仕方。水の化学式と言われて「H2O」と答えることが大切なのではなく、水は水素分子とと酸素の原子(だよね・・・)が結びついていると知っていることのほうが、ずうぅぅぅぅっと大事なのら! 

つまり、本日の論点として最も重要なのは、私のあのときの化学の順位は、下から50番目以上であったに相違ないと言うことである!!!

2008年4月1日火曜日

アメリカの大学事情14

朝一にJHUのファイナンシャルエイド・オフィスから電話があった。
昨日、あの感じの悪いおばさんと話す前に電話したときに、留守電になっていたので、長々とメッセージを残していたのだ。電話をくれたのは、例の「ゼロ回答」のお手紙をくれたインターナショナル学生の担当の人。

キニコが大学に申し込んだ時点では、まだグリーンカードを取得していなかったので、「インターナショナル」の学生として申し込まざるを得なかった。無論、今後ステータスが変更する予定であることは書き添えていたが。

電話をくれた担当者の話では、「収入は基準を上回っているので、奨学金は出ませんが、永住権を取得したことで、連邦政府のローンの借り入れ対象にはなります」との話。以前に連邦政府のローンの利率を書いたけれど、今年多少下がることは期待できても、今の段階では6.8%~8.5%と言う非常に高いレート。信じられん・・・。これなら日本の銀行から借りたほうがずっと安い。

機会に便乗して、この担当者に我が家の窮状を訴えた。1920年代ものの1500平方フィート足らずの古い家を、高ぁぁぁーい家賃で借りていること。この家賃は会社が給与の一部として払っているが、実質的にはこの家賃プラス税金の分が、我が家の収入を大幅に多く見せていること。(この分を差し引いて、この学校のウェブサイトにあるカリキュレータを利用してEFC(Estimated Financial Contribution=家計から教育費に支出可能とされる金額)を算出してみると、Financial Aidの額は2900ドルと出た。)

さらに、日本での持ち家のローンは支出として考慮されていない。持ち家を資産と考え、これを抵当にして借り入れをすることを想定しているのかも知れないが、常々不運な我が家の場合は、買ったマンションが、現在は購入価格の4分の1に迫っている。つまり資産価値はマイナスで、これを抵当に更なる借り入れなど有り得ない。(このローン分の支出をEFCから差し引くと、ローン分だけ奨学金がもらえることになる。単純計算なので、そうは問屋は卸してくれないだろうが・・・。)

取り合えず、私が電話で説明したことを、書面にて提出してくださいとのことだった。ただし、あまり期待するなと釘をさされたが。毎年、奨学金は見直しされるのではあるが、初年度にAidがもらえるかどうかが、非常に重要なのだ。初年度、Aidをもらえない場合は、親の死亡や失業など、大幅に家庭の経済状況が変わった場合は別だが、次年度から認められるチャンスは極めて少ないのである。

と言うことで、こんなブログを書いている場合ではないのだ、これから陳情書をタイプしなければならない。

ゼロ回答の話はキニコに留守電を残しておいた。夜に電話があり、
「ギャップイヤーをしたいのだけど」と言う。
ギャップイヤーとは、高校卒業後、大学にすぐに入らずに1年空けること。合格した学校には入学を1年遅らせてもらう。
「ギャップイヤーで何するわけ? 確固とした目的がなけりゃ意味がないよ。」
「いろんなプログラムがあるの。オーストラリアでTeaching Assistanceとか。
「で、それって、お金もらえるわけ?」
「もらえるやつと、もらえないのがある。」
はぁ~? じゃあ、何のためのギャップイヤーなの。

この1年間、両親が馬車馬のように働いたら、4年分の大学費用でも貯まると思っているのだろうか。

ちなみに、ある学校からは15000ドルのオファーがあったそうだ。私は「もうそこに行って!」と思う。しかし本人はJHUにこだわっているよう。

つめの垢

私よりX周り若い友人がいる。お互いがアメリカに暮らしていた時に、彼女の言葉の端々には、彼女のご両親に対する深い思いやりがにじみ出ていた。早くから親元を離れてしまって、十分に親孝行ができなかったからと、日本に帰国した彼女は早速、お父さんとお母さんのお誕生日に、年に二度、ご両親を旅行に連れ出している。先日も、彼女のブログに旅行の様子が報告されていた。

彼女は、文字通り私のように体に贅肉がつきまくっていなくて、まだまだ身軽な身分だとは言え、ことあるごとにご両親に対する感謝を口にし、実際にそれを行動であらわすなんて、そんな簡単にできることでもない。

深く感じ入った私は、これは是非とも見習わねばと、早速つめの垢を送ってもらうようにお願いした。

到着次第、煎じてキニコとシナコに飲ませるつもりだ!