2008年3月31日月曜日

アメリカの大学事情13

そろそろ、アメリカの大学事情と言うより、我が家の台所事情とタイトルを変えたほうが良さそう。

今日、JHUから奨学金の検討結果の手紙が来た。
それには、オタクの収入は本学の授業料を十分にカバーできるものと判断いたしましたゆえ、本学からの奨学金は出ません、との旨が記されていた。

おまけに、来年度の授業料はさらにアップしていて、
授業料 37,700ドル
寮費  11,578ドル
入学費  500ドル(1年生のみ)
しめて、49,778ドル。
だと。ふざけんな!
しかも、アメリカの大学の授業料は、平気で毎年どんどん値上りすることも忘れてはならない。

加えて、教科書代1000ドル、小遣い1000ドル、交通費650ドルは、別途必要でしょう、と、こともなげに書いてある。

いったいどこの誰が、「十分にカバーできる」と言うのか・・・。夫の会社の収入が、見かけだけ多いことも本当に呪いたい! 

一応、交渉してみようと、Financial Aidのオフィスに電話をしたけど、そのおばさんがまた、超愛想が悪い。この学校のイメージがどんどん悪くなる。一応、再検討のお願いを提出することにしたけれど、望み薄。

内心、少しくらいは奨学金が出るだろうと期待していただけに、かなりショックだ。本気でこんな授業料が出せると考えているのか。信じられない。この授業料より安い今の高校ですら、年間10000ドルの奨学金をもらっていると言うのに、ゼロ回答なんてあり? 

ということで、キニコさんの夢の桜は散りそうであります。
残る州立2校のどちらかに受かってくれるといいんだけどなぁ。あるいは他の私学からどーんと奨学金のオファーがないかなぁ・・・。

2008年3月28日金曜日

アメリカの大学事情12

キニコが受けた11校からの結果がだいたい出揃ってきた。

11校のうち、滑り止めのSafety3校からは、めでたく合格通知が届いた。そのうちの1校からは、オナーズプログラム(特別コース)に入らないかと誘いがあり、面接を受けたが、こちらはまだ結果が出ていない。妥当校(Match)4校のうち、2校合格、1校不合格、残り1校(州立)はまだ結果待ち。不合格の1校は、カナダの公立でワタシ的にはとても魅力を感じていたのだが・・・。外国人には狭き門らしい(と、通知にあった)。ひょっとしたら校(Reach)の3校で、第一希望のJHUは合格!早期申し込みで「延期」となっていたため、ほぼダメだと思っていたのだが。BCは不合格、残り1校の州立はまだ結果待ち。逆立ちしても無理校(Extra Reach)のコロンビアは、逆立ちしても無理なんだから、結果を待つまでもない。

志望校に取り合えず合格したことでキニコはとても嬉しそうだった。ただ、「合格した」と「入学する」は別問題なので、「行けると決まったわけじゃないからね」と言ったら、「それはわかっている」。たとえ行けなくても、合格して行かないのと、不合格で行けないのでは、大きな差があるから、親としても、合格したという知らせはとても嬉しい。

さて、各校から奨学金の知らせが来るにはまだまだ時間がかかる。多くの学校は、収入に基づく奨学金を出すに当たって、連邦政府の奨学金制度であるFAFSAへの申し込みを条件としている。FAFSAの申し込み条件は、アメリカ市民もしくは永住権を持つこと。

我が家はFAFSAを申し込むがために、去年の2月から永住権の申し込みを開始し、めでたく今年の2月末に永住権を取得した。大学によりFAFSAへの申し込みの期限が設定されており、3月1日というところが多かった。日本で永住権の手続きをして、アメリカに戻ったのが2月27日。その日からあわててFAFSAを用意し、ぎりぎりで申し込んだ・・・・つもりだった。

有料のサービスを利用して、オンラインで申し込んだのだが、2月29日にそのサービス協会から電話があり、「社会保障番号がない場合は、オンラインでは申し込めません」と言われた。キニコの社会保障番号は現在申請中で、もらえるまでにはしばらくかかる。仕方なくサービス料を返金してもらい、あわてて申込用紙を印刷し、紙での申し込みに切り替えた。翌朝、郵便局から速達で送った。なんとか3月1日の消印で出すことができた!

・・・はずだったのに・・・。2,3日前、FAFSAから、その申込書が返送されてきた。永住権所有者で社会保障番号がない場合は、外国人登録番号というのを代わりに記入することになっていた。申し込み時は、まだグリーンカードの実物は届いていなかったが、アメリカ入国用に暫定のスタンプがパスポートに押されており、そこに外国人番号は記されていたので、それを記入した。ところが、パスポートに書かれた番号は8桁。申し込み書の書き込み欄は9桁。私は左詰で8桁の番号を記入していた。

それが返送された原因だった。先日、送られてきたグリーンカードには、パスポートに書かれた番号の最初に、"0"が入っている。つまり、0を加えた9桁の数字を記入する必要があったのだ。

FAFSAは再提出したけれど、これで提出期限を1ヶ月ほど遅れてしまった・・・。あ~。
連邦政府の奨学金をもらうには、我が家の収入がかなり多いのは承知しているが、これが他の奨学金の前提条件になっている以上、出さないわけには行かなかったのだが。まぁ、どうなりますやら、お慰み。成績での奨学金もないわけではないので、わずかな望みをこちらにかけよう。

ちなみに、すでに1校からは、奨学金のオファーが来た。キニコが「ママ、8000ドルもらえたよ!」と喜んで電話してきたのに、私と来たら思わず「え、たったそんだけ?」などと言ってしまった・・・。ちょっと反省。でもさ、寮費と合わせて43000ドルの学費に、8000ドルもらっても、35000ドルも払わなくちゃいけないのだよ。キニコには悪いが、まさに焼け石に水なのだ。

それだけのお金をつぎ込んで、あるいは、それだけの借金を背負ってまで、行く値打ちのある大学かどうか、どうやって見極めるのだろう。一体全体、どこの大学にしろ、本当にそれだけの価値があるのだろうか。自尊心をくすぐられるためだけに進学しない強い気持ちを、親子共ども持たなくちゃいけない。

グリニッチ

シナコは4月で16歳。
つまりシナコの友達の大半も今年16歳になるってこと。
アメリカでは、女の子の16歳の誕生日はSweet Sixteenと言って、それまでの誕生日とはちょっと違って特別な誕生日となる。

16歳の誕生日にキニコの場合は寮にいたし、その少し前に冬休みで家に戻っていたから、その時にプレゼントを上げて終わっていた。(未だに誕生日当日に何もしてくれなかったと文句を言っているが、「日本人はそんなものなの」ってのが私の言い訳。)シナコに関しても、我が家ではお金は掛けられませんと釘は刺してある。が・・・。

2月に、シナコの仲良しのアディティのSweet Sixteenの誕生会がグリニッチアベニュー近くのレストランが貸切で行われた。アディティはインド人で、3台分のガレージがある豪邸には、本国から連れてきた住み込みのメイドさんもいる。

今夜は、ジェンのSweet Sixteenパーティーが7時~11時の予定で行われる。会場は近くのハイヤット・リージェンシーホテルのリバーサイド・ボールルーム(日本風に言えば「XXの間」)。マスカレードパーティー(仮面舞踏会)だそうで・・・シナコは「ドレスがない!買いに行かなきゃ!」と言っているが・・・今夜だよ。どうせ買いに行っても、シナコに合うサイズなんてないのだから、あきらめて私の洋服でも着ていけばいいのに。ダサいっ言うに決まってるが。)

それにしても、グリニッチの裕福さにはため息が出るというか、あきれるというか。

来週末にはシナコが通う公立高校グリニッチ・ハイスクールのPTAの集まりがある。年に1度の資金を集めるためのパーティーなのであるが、行われる場所も学校ではなく、グリニッチ・カントリークラブ。

Fund Raising(資金集めのためのイベント)と言うのは、アメリカではどこの学校やクラブでもやる一般的なイベント。通常はベークセール(ケーキやクッキーを売る)や、チョコレートやキャンディーを売ったり、オハイオの学校のときは学校からカタログが配られて、掲載されている商品を友人知人に買ってもらう。(知人の少ない我が家では仕方なく自分たちでも購入していたが・・・。)学校でのイベントでは、地元の商店や会社が寄付を行って、それを商品にすることも珍しくはない。

去年はまったく注意も払っていなったのだが、今年、グリニッチ高校のPTAのイベントの内容をじっくりみてたまげた。PTAから来たメールでの案内状は下記のとおり。

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素敵な食事、音楽、知人との集いの夜!
服装:グラマラスな "Motown"(ダイアナロスをイメージして)ファッション、カジュアルな "Motown" でも、はたまたオフィスから直行の "Motown" ファッションでも、何でもOK。
食べ物と飲み物:おいしいご馳走+ビール、ワイン、ソフトドリンク(参加費に含む)+ キャッシュバー
ミュージック&ダンス: "ETA" - いかした Motown Band
サイレント&ライブ・オークション: コメディアンJane Condonを招いて。他では手に入らない信じられないアイテムの数々。カタログをご覧ください。当日参加できず代理のビッドをご希望の方はご連絡ください。

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で、カタログの内容を見てぶっ飛んだ! もちろん中には普通の内容(xxの商品券だの、xx会社贈呈のxxだの)もあるのだけれど、よその公立高校ではこんなものは出るまいと思えるオークションアイテムの数々。その一部をご紹介しよう。

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RCAミュージックグループ、夏のインターンシップ
2008年の夏の2週間、RCAの役員の補佐として仕事をする。音楽に興味のある16才以上のグリニッチ高校の生徒限定。実際にミュージシャン(Alicia Keyes, Rod Stuwart, Christiana Aguillera....他数名の名前が列挙されている)と遭遇したり、録音やビデオ撮りなどの作業に立ち会えます。
寄贈者:RCA Music Group

Iron Chef(料理の鉄人)が作る10名分のディナー
自宅にIron ChefのZan Ng氏が来て料理をしてくれます。
価値:1000ドル分
寄贈者:Zan Ng

ブルース・スプリングスティンのコンサートチケット
ジャイアンツ・スタジアムで7月28日に開かれるコンサートのチケット5人分
席:セクション2の5列目!
寄贈者:スティーブ・ベネット

NBCのNightly Newsの裏舞台
番組プロデューサーのドンナ・バスが案内するニュースの裏舞台ツアー2名分:ニュースルーム、コントロールルーム、スタジオ、編集室。
寄贈者:ドンナ・バス

2008ワールドシリーズの全てのゲームのチケット4人分
寄贈者:マックヘイル・ファミリー

人気番組「アメリカンアイドル」のフィナーレ2晩を会場で見学、およびビバリーヒルトンホテル宿泊券2晩分を4名さまへ
寄贈者:RCA Music GroupおよびBeverly Hilton Hotel

人気番組Dancing with the Starsをスタジオで見学。その後、番組有名人やプロのダンサーとのひと時(1名分)*ロサンジェルスまでの航空券は含みません
寄贈者:Dancing with theStarsのTom Bergeron

コロラドの豪華な3ベッドルームヴィラで過ごす1週間
冬ならスキー、夏はゴルフ。コンシェルジュサービス、ハウスキーピング付き。プライベート・シェフも手配可能。
価値:7000ドル
寄贈者:エイミー&ビル・クラーク

アーチストリート(グリニッチ)のティーンセンターでのパーティー
息子や娘のために、ティーンセンターで100人の友達を招いてのパーティー。バールミツバやSweet Sixteen、卒業パーティーに。
価値:7500ドル
寄贈者:アーチストリート・ティーン・センター

Teen Kids Newsでのアンカー
マンハッタンのTeen Kids News(TV番組)のアンカーとして原稿を読む(高校生限定)。ジャーナリストの仕事を生で体験。
寄贈者:アル・プリモ

アリゾナ州スコッツデールでの5泊
xx誌ではアメリカのトップ75のゴルフコースのひとつ、△△誌ではトップ10ゴルフコースのひとつとして挙げられているブルダーズリゾートの豪奢な2ベッドルームでの5泊。
価値:4000ドル
寄贈者:ジョン&キム・ドナヒュー

人気番組「ジャッジ・ジューディー」(判事ジューディー)のVIPバックステージ・ツアー(16歳以上のこと)
ハリウッドでの収録中は法廷の中で番組を見学、収録後スタッフと判事とのランチ会食。
寄贈者:Judy & Jerry Scheindlin(←これは判事と旦那)

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そうそう、カタログの中に、
「グリニッチ高校卒業式当日の特別駐車スポットのチケット 寄贈者:校長」
ってのもあった。こんなの売るな!って思うけれど、駐車場が十分にないので、早々と駐車場確保に学校に行かねばならないことを思ったら、お金出しても欲しいかも。

カタログの内容を見てお分かりのように、この高校のPTAや関係者には、メディアや芸能に深く関わりを持った人が多いらしい。マンハッタンに近いという土地柄もあるし、古くからこの辺りはお金持ちの別荘地と言うこともあるのだろう。

以前にも紹介したグリニッチにあるベルヘイブンという地区には、特に有名人が多いようだ。30年前の殺人罪で、当初から容疑者と目されていた中の一人、マイケル・スケイケルというロバート・ケネディーの甥(実際には妻の甥)が去年逮捕された。このスケイケルもベルヘイブンに住んでいた。この犯罪を題材としたTimothy Dumasの「Greentown」という本には「Murder and Mistery in Greenwich, America's Wealthiest Community」(アメリカで最も裕福なコミュニティー、グリニッチでの犯罪とミステリー)という副題が付いている。また迷宮入り事件となっていたこの事件を、自分なりに調査して書いたMark Fuhrmanの「Murder in Greenwich」(グリニッチで起きた犯罪)という本についてのアマゾンの編集コメントでは、ベルヘイブンを「グリニッチでのsuper-upper-scale(超高級)地区」としている。余談になるが、この事件の解決までに30年の月日を要した背景には、こうした有力者の前で法の平等が難しかったこと、加えてそれだけの年月が経過してようやくケネディー家の威力に衰えが生じたということなのだろう。

ちなみにブッシュ家もベルヘイブンにあった。ブッシュパパはここで育ち、公立ではなく近くの私立Greenwich Coutnry Day School(うちのお隣の息子はここに通っていた)に中学まで通い、高校からはマサチューセッツ州にある有名プレップスクールのアンドーバーで学んだ。息子もベルヘイブンで生まれたが、育ったのはテキサス。高校からは同じくアンドーバー。(ちなみにキニコはアンドーバーを受験したが見事に落ちた。)

なんだか話が脱線したが、自分たちの別荘の利用をオークションに出している人や、有名人・有力者との繋がりが伺われる内容で、グリニッチの裕福さを改めて思わされ、ため息が出てくる。不況の波も、この辺りではどこ吹くそよ風って感じなのだろうか。


<グリニッチ高校のオークションカタログ>
興味のある人は、直接ご覧ください
http://www.greenwichschools.org/uploaded/high_school/pta/MOTOWN_BENEFIT_CATALOG_2008_3-25.pdf

2008年3月24日月曜日

熱中時代

うーん、信じられない!
みんなどうしちゃったのかしら。

最近、私の知人友人の間で妙な動きがあるのだ。これって、年齢的なものか。

同世代のある男性が、「自分でもどうしてなんだか、わからないんですよー。でもはまっちゃったんです」と告白してくれた。彼は最近人気が出つつある?PERFUMEという3人組の女の子の歌手のファンに突然なってしまったと言うのだ。きっかけはNHKが流した環境をテーマにしたCMの歌だった。「あれ、この歌いいな」と思って、いろいろと調べて聞き始めたところ、この3人組の大ファンになってしまい、なんとファンクラブにまで入ったとか。

生まれてこの方、歌手にも俳優にも熱を上げたことのない私には不可解でしかない。しかも「この年」になって・・・というのが。「19歳だなんて、もうそれは犯罪ですよよ!」と思わず言ってあげましたが、彼の気持ちは揺らぐことはなさそう。勧められてYouTubeで歌を聴いてみたら、確かに「マカロニ」という歌はいいです。(でも、あまりにプラトニックな感じで・・・、汚れた大人は、昔を懐かしんで聞くしかないわさ。)

で、昨日はもう一人の友人と久々に電話で話したら、ちょっと日本に帰省していた間に何が起こったのか、彼女は突然「沢田研二」のファンになってしまった。この友人、私とはもうウン十年の付き合いなんけれど、当時からロックファンの彼女は、音楽に疎い私に、「これ、いいよ~、聞いてごらん」と、U2だの、ブルース・スプリングスティーンだののレコード(の時代さ!)を無理やり貸してくれたことがある。その彼女が、ここのところ、「こんなCD買ってん。聞いてみる?」と貸してくれるのが、キャンディーズやチューリップ。極めつけは「これいいよー!」と貸してくれたのが、布施明のベスト。・・・確かに懐かしい。

その彼女、布施明には見切りをつけ、なんと沢田研二のファンクラブに入ってしまった。アメリカに住んでいるから、ファンクラブは日本の義妹にお願いして、そこの住所で入ってもらったとか。「きっと義妹は、私らがその昔、杉良太郎ファンのおばさんたちを不可解な気持ちで見ていたのと同じ眼差しで、見てるんやろうなぁー」と呟いたので、それは間違いないと太鼓判を押してあげました。

あぁ、でも、おかしいやら、くすぐったいやら。みんなどうしちゃったんだろう。
それとも、スターや俳優などのバーチャルな存在に熱を上げることのできない私のほうが変なのかなぁ。私も誰か熱中できる人探そかなぁ。

2008年3月13日木曜日

やはりシナコ

最近、ママは出稼ぎに忙しい。どうやらコネ通の存在自体忘れているんじゃないかと思う。
同時に僕の存在も忘れていると思う。

グリーンカードの面接で、2月にみんなが日本に行っていた間はちょっぴりさびしかったけれど、それでも1日に2回も、誰かが訪問してくれて、僕と遊んでくれた。だからあの10日間は良かった。

シナコなんて、普段家にいたって、いろいろと理由をつけて、僕を散歩に連れて行ってくれない。「散歩に行っていない暦2ヶ月」と言っても過言じゃない。キニコがいれば、雪が降ろうが槍が降ろうが、散歩に連れて行ってくれる。(必ずしも、極寒の日に散歩に出たいわけじゃないけれど、めったに機会がないもので、そんな寒さでも僕は我慢して喜んでいる振りをする。でもそのうち前足がかじかんで、動けなくなるのだ。)

でもシナコと来たら、「今日はこんなに宿題があるから無理」「今からピアノの練習するからだめ」「レポートの締め切りが明日だから」と、適当な理由をあげつらって逃げようとする。ママもママで、都合の悪いときは、「ジョダは、私の犬じゃない。世話しないなら誰かにあげれば?」といい、調子のいいときは、「子供の中で“息子”が一番かわいい!」とか言うのだ。要は、僕はこの家族にアビューズされているのだ。人間だったらシェルターに駆け込めるのに、僕の場合はシェルターに駆け込んだ後、生命の保証がないだけに我慢している。

というわけで、シナコに恨みがあるので、シナコの失態を暴露しよう。今週の月曜、パパもママも泊りがけの仕事で家にいなかった。つまりシナコと僕と二人ぼっち。月曜の夜、シナコは体操部のディナーパーティーと称して、遅くまで帰宅しなかった。僕は晩御飯抜かもと不安だったが、それは覚えていてくれた。

翌朝、6時過ぎごろから僕はおちおち寝ていられなかった。というのも、パパとママが交代で1分おきに電話を鳴らすのだ。でもシナコは起きない。ママは留守電に向かって叫ぶ。「シナコー!えー加減に起きなさい!何時だと思っているのよ! 学校に遅れるよ!」 これが7時前まで続いた。パパとママはどうやらその後は電話ができない状態になったのか、遅刻が確定したからか、そこで電話はぴたっとやんだ。その後は30分に一度くらいママからの電話が鳴る。それでもシナコはまだ起きない。日曜から夏時間で時差ぼけってのもあるけれど、ここだけの話、あいつは天然にぼけているのだ。

9時前、とうとうシナコは電話で目を覚ました。この電話は学校からかかってきたもの。
「シナコさん、今日は州の統一テストの日ですよ!」

シナコの焦りようったら、ざまあみろってんだ。でも僕は急に心配になってきた。あせって、僕をトイレに庭に出すのも、朝ごはんをくれるのも忘れて、出かけてしまうのではないかと。でも、直後にママからも電話があって、「あんたが遅刻するのはいいけど、ジョダの世話だけはちゃんとしていってよ!」と釘を刺してくれた。いいとこあるね。

果たして、シナコは半泣きになりながらも、タクシー会社に電話し、待っている間にちゃんと僕のトイレとごはんの世話をして、着替えて出ていった。テストのほうは、後日追試を受けるらしい。

ところで、その日の午後、キニコが春休みで帰ってきてくれた。僕は当分さびしい思いをしないで済む。