2008年4月24日木曜日

アメリカの大学事情19 奨学金の傾向

21日付けのウォールストリートジャーナルで、大学の学費についての記事が掲載されていた。「嗚呼ハーバード」で書いたハーバードやイェールに続いて、スタンフォードなどでも同様の学費負担の見直しがかけられているようだ。

記事によると、スタンフォードの場合、年収が100,000ドル以下の場合の学費負担はゼロ。MITおよびダートマスの場合は、75,000ドル以下の場合で無料となる。こうなると、例えば年収が9万ドルでカリフォルニア州在住の場合、ハーバードに進学すれば授業料は6300-10,300ドルのところが、州立のUCに進学すれば25,000ドルとなってしまう。

優秀な学生が州外の私立に流れることを懸念してか、ニューヨーク州のある上院議員は、「中流家庭は州内の大学に進学する際、収入の1割以上の学費負担を強いられるべきではない」との提案を州政府に提案したらしい。 彼の言う「中流」とは、年収150,000ドルまでを指す。

金利が高く、卒業後にローンの返済ができない生徒が増える中、学費負担の見直しのひとつとして、学生ローンの削減もある。数十校が、これまでローンとして学生に貸与してきた分を、全額グラント(無償の奨学金)に置き換えている。コーネル大学の場合は、2008年度の入学者でグラントに置き換えたのは年収6万ドル以下の場合のみだが、来年度からは、このラインを75,000ドルまで引き上げ、75,000ドル~120,000ドルの収入の場合は、ローンの上限額を3000ドルとした。

こうした学費負担の見直しおよび削減を実行した大学は、これまでに全米に2500校以上あるの4年制大学うちでわずか50校のみ。

過去5年間の4年生の私立大学の学費上昇は、インフレ分を差し引いても14%。更に公立大学ではこれが34%に上っている。こうした状況の中、逆に大学の寄付金が大幅に増えていることから、アメリカ政府も現状の見直しにプレッシャーをかけているようだ。現在、寄付金総額が10億ドル以上ある大学の1割が、ここ10年間で寄付金額が倍増している。寄付金規模が5億ドル以上の大学が全米では130校以上あるそうだ。

USNewsでトップ25校に挙げられた大学の中で、寄付金10億ドル以上に名を連ねるのは:
ハーバード(292億)、イェール(179億)、スタンフォード(140億)、プリンストン(134億)、
MIT(83億ドル)、
コロンビア(59億)、ミシガン*(55億)、UPenn(53億)、エモリー(50億)、
ワシントン(47億)、シカゴ(46億)、ノートルダム(44億)、コーネル(43億)、
デューク(39億)、ライス(39億)ダートマス(33億)、UCバークレー*(33億)、
ヴァンダービルト(29億)、UVA*(24億)、ノースウェスタン(23億)、JHU(22億)、ブラウン(21億)。
(*は州立。ただし州立大学の学生数は私立に比べてかなり多い。)

さて、こうした流れの中、今後この学費負担の見直しが他校にどう影響していくか、私の一番の関心事だが、ハーバードやイェールのような大幅な学費負担カットを敢行できるのは、「寄付金規模が50億以上の大学だけであろう」と書かれていた。また学生のローン負担をゼロにできる大学も、多くて全米の5%、つまり125校止まりとの見通し。そこまで寛大に振舞えるだけの寄付金を持つ大学は、それほどないので、今後は大学レベルの格差がますます広がるのかもしれない。

ところで何故アメリカの大学にこれほど寄付金が集まるのか。ひとつには世界各国から優秀な人材が集まるために、成功する人たちが多いということ。成功の規模が、諸外国に比べてずっと大きいということ。だが本当の理由は税金だと私は見ている。収入の中で、寄付金は非課税となる。つまり節税対策になるのである。しかも単なる節税にとどまらず、寄付をして自分の名前の入った図書館でも建ててもらえれば、宣伝・売名にもなるのだ。

*****

さぁて、キニコの話。本来なら今日がJHUのオープンハウスだった。「行くのか行かないのか決めて連絡して」と再三メールを送ったり、留守電にメッセージを残していたのに、全く返事がなかった。行くのであれば、ここから車で4時間のボルチモアだから、私としてはそれなりの準備が必要だったからだ。

昨夜とうとう電話があり、「行っても、無駄だから行かない」とのこと。多少はまだ後ろ髪を引かれているものの、更にファイナンシャルエイドの担当者にあって直に交渉したり、質問したりするガッツもないよう。「あの学校に行けば、頭のいい子ばかりで、自分は底辺をうろうろするだけかもしれない。それよりディキンソンに行って、上のほうにいける努力をする。そうすればよい大学院にいける。今は大学院のレベルが勝負だから。で、ディキンソンには行けるの? ブリンモアは、学校はきれいでご飯もおいしかったけれど、変な人ばかりだから行きたくない。受かれば、ミシガンがいいけれど、多分無理と思う。クラークソンは田舎だから行きたくない。」

キニコの話を聞いていて、正直言って、ガッツがないというか、情けない気がした。と思いつつも、半分は自分のレベルを解って現実を見据えているとも思える。いずれにせよ本人が納得すればそれでいい。ただ、ディキンソンで上にいける? 彼女の性格から、してそれはなさそうだけど。

取り合えずディキンソンのファイナンシャルエイドの担当者には、ワークスタディーができるか、あるいはキャンパス内で仕事ができるか問い合わせているらしい。多分前者は無理だろうけれど、仕事は必ずできるはず。

ブリンモアからはまだ最終回答はないが、もう行かないと決めたようだ。本当に変な学生ばかりなのか、逆にキニコの方が変なのかは別として、学校に行ってみて、その雰囲気が自分に合うかどうか、入学前に確認できるオープンハウスは意義があるように思う。

取り合えず、私はかなりすっきりした。そして「最終的に、どの学校に行けるか行けないかは、パパと話して欲しい」と言いました。「相談には乗るけれど、ママは決められないから」と。ちょっと突き放したようだけれど、今回は私主導では決めたくないから。

一応キニコのメッセージは、コロンビアにいる夫にメールで伝達。
「わかった。でも大学院に行かせる金なんかないよ。キニコには4年分しか出せませんとはっきり言っておいて」だって。私の返事。「言っておいて、じゃなくて自分でキニコと話してね。」

どうしてこの親子は私を介そうとするのだ。できるだけ私は介入したくないのに。あー、やっぱり最終的には私がいないとだめってことか?

7 件のコメント:

匿名 さんのコメント...

はじめまして Calperchと申します。北カリフォルニアに30年ほど住んでいて、大学生の息子がおります。彼の大学でも来期からローンがなくなり、Grantにかわるそうです。これは、FAをもらっている我が家としては大歓迎です。

私も、息子が高校1年の時に我が家の大学教育資金の話を息子にして、資金は$100000
しかないから、これで行ける所に行けと引導を渡しておきました。

現況から予測すると、彼が大学を卒業するまでにちょうど予算程度の支出となると思います。我が家の場合にはUCに行くよりも私立の今の大学のほうが、少し安上がりだったと思います。

大学院については、博士課程の場合には上位校では学費免除、その上Stipendが年間
$18000-$30000程度、受給できるはずですので、お確かめください。これは、やはり、大学院進学を希望する息子の指導教授からの情報ですd。

これからもブログ楽しみにしています。

Jodako さんのコメント...

Calperchさん、はじめまして。私が無理やりブログのアドレスを送りつけた人でない方がブログを読んでくださっていると知り、驚くと共に喜んでいます。

息子さんが高校1年生のときに、きちんと資金計画ができていたと聞き、娘のいい加減さばかりをなじっていた自分を反省しています。大学の資金のことを真剣に考え出したのも、実情を把握したのも、ここ1年のことでしたから。

あと2年で次が控えていますが、まだアメリカの大学に進学するかどうかも含め、不確実要素が一杯で・・・どうなるのでしょうか。

大学院は、コースにも因りますが、できれば一旦社会に出てから、自力で支払いをして欲しいと思っています。24歳以降に・・・。

また時々覗いてくださいね。

匿名 さんのコメント...

お嬢様の大学御入学おめでとうございます。
一安心ですね。

初めまして。
ホチキス検索で訪れました。娘は日本のインターG8,来年秋のPrep.入学目指し、受験体制に入りました。
質問があるのですが、留学生の場合、奨学金を希望すると、合格率が低くなるのでしょうか。ご存知ありませんか?
今は受験で頭がいっぱいですが、このブログを通して、
私どもの先を行く先輩方からご教示頂く事が、多くありそうです。日本の教育などのご意見も、代弁して下さっているみたいで、嬉しいです。
隅々まで読ませて頂きます!
Shinonより

Jodako さんのコメント...

学校によりNeed blindとNeed awareに別れています。Need blindは、奨学金を申し込んでいるかどうかと、合否決定は切り分けられており、Need awareの場合は、奨学金の申し込みも考慮に入れて合否を決定するという意味です。

娘が受験した中では、チョートはNeed awareでしたが、ディアフィールドはNeed blindでした。チョートの場合は、合否通知に「奨学金が不要であれば合格であったが、出せないので不合格」とありました。受験当時はこの別があることに気づいていなかったので、後で知りました。学校に問い合わせれば、選考にどちらのシステムを利用しているか教えてくれます。

ファイナンシャルエイドの場合、やはり全ての選考において、アメリカ市民もしくは永住権保持者であるかどうかが優先されると思います。

これは同じようなレベルの生徒と比較しての場合で、勿論、生徒の能力が最優先されます。学校としては優秀な生徒が欲しいので、能力があれば、この限りではないと思います。

娘の学校には、アジア(韓国、中国、台湾)からの留学生がたくさんいましたが、皆さんほーんとに優秀でした。でも彼らが奨学金を得ていたのかどうかは判らないです。

受験、頑張ってくださいね。5年前の1月に面接で各校を回りました。あの時も韓国からの受験生が多いのに驚きました。日本人かなと思ったらみんな韓国人。日本人には一人も会いませんでした。大雪に見舞われたのを思い出しました。とても懐かしいです。

匿名 さんのコメント...

詳しいご説明ありがとうございます。
やはり、奨学金申請は慎重にしなければいけないのですね。

有名Prep.の学生の内訳を見ますと、極端に日本人は少ないですね。差別されているように思えてきます。

今年、遠い知り合いですが、Exeter女子、Milton女子が日本から入学するそうです。たいしたものです。

娘の面接より、1日2校、5日間の日程で計画した学校訪問。レンタカーで時間通りに迷わず辿り着けるか心配です。
よれよれになりながら訪問する事になると思いますので、最低ここはcheckという項目がございましたら、教えて頂けますか。
宜しくお願いいたします。

Jodako さんのコメント...

日本人が差別されているわけではなく、アジアの諸外国、特に韓国からの受験生の絶対数が多いということです。学校も多様性を求めているので、今は逆に少数派の日本人であることが優位に働くと思いますよ。

同じアメリカ人でもプレップスクールの受験生は、やはり東部出身者が相対的に多いため、同じ能力なら中西部や山間部(っていうのかな・・・)の受験生のほうが有利になるのです。人種的にもマイノリティーや学校のある地元の生徒も有利です。(多分枠があるから。)

我が家のように奨学金なしでは進学できない場合は、Need awareの方が良かったと思います。受かってから全額払えと言われても出来ない相談ですから。ただNeed blindなら学力での合否が判って、自尊心は満足できるのですが、やっぱりお金が払えなくて行けないというのは、悲しいですよね。(親として、未だにJHUに対しては何とかならなかったのかなぁって思いますもん。本人はどう思っているか知らないですけど。)でも出せないものはやっぱり出せないですよね。

匿名 さんのコメント...

JHUに関して、私も同じ立場なら、きっと親として切ないだろうなと、思います。

でも、お嬢さんはよくわかっていらっしゃると思いますよ。きっと大学でAレベルを取って、よりレベルの高い大学院に進まれると思います。やはり一生つきまとうのは大学院名ですから。

娘も院まで進む予定です。
それにはインターで楽しく、余裕でAレベルを取っている場合ではないんですよね。インターという下駄を履かせてもらって、実力より上の大学に入っては、大方簡単に振り落とされていますから。

「日本人』が有利になるなんて、少し勇気が湧きました。
良い教育を受けさせるために、私も頑張ります!