2007年11月7日水曜日

アメリカの大学受験と早期申し込み - 大学事情8

日本で流行のAO(アドミッションオフィス)入学というのは、そもそも通常のアメリカの大学受験を模倣したものらしい。アメリカの受験は、日本のように各校にて試験を受けたり、面接を受けたりはしない。合否の判定は、各大学のアドミッションオフィスに提出する一連の書類(アプリケーション)とSATの得点で決まる。SATの得点よりも、学校の成績、先生からの推薦状、受験者のエッセイなどで構成されるアプリケーションの内容の方が比重は高いと言える。その証拠に、ハーバードを受験した生徒の中で、SATが満点だった生徒でも何十人も不合格となっている。

日本の試験での一発合格とは違い、高校生活の4年間(実際には11年生までの3年間もしくは、12年生の前半までの3年半)の学業および課外活動の内容が、評価の対象となる。故に、成績はかりではなく、学校内外での活動実績(スポーツ、クラブ活動、ボランティア、夏季休暇中の仕事やその他の体験など)が重視されるため、本来の高尚な動機を外れて、計算高い気持ちでボランティア活動に参加する生徒も多い。(動機はどうあれ、ボランティアをしてくれるのだから、文句を言う筋合いはないのだが・・・。)

有名な私大では、本人の実力とは別に「レガシー」が考慮されるところがある。つまり、歴代この大学の卒業生であるとか、寄付金の多い家族といった具合に。ブッシュ大統領がエール大学というのも、頷けますね。

すべてのアプリケーションは、郵送またはオンラインでの提出であり、エッセイも自筆ではなくタイプであるから、誰が書いてもわからない。そこで、親が替わりにエッセイを書くといったことも、実際にはあるらしい。しかし、文章の上手下手を問うよりは、その生徒がどういう人物であるかを伺うための資料となるので、上滑りの上手な文章よりは、下手でも、個人の意見や考えを綴った内容が求められている。
アドミッションオフィスに提出された資料は、地区毎の担当者が隅々まで見て、推薦できる生徒のファイルを選ぶ。が、推薦しない生徒のファイルも、次の担当官へ渡される。こうして、だいたい3段階くらいの人の目を経て、最終的な合格者が選出される。文句なく合格というファイルは簡単に選べるのだが、ボーダーラインの中から、誰を合格にして不合格にするかが一番難しいらしい。そういう場合は、最終的な選考会でのディスカッションになる。
どうして知っているか? キニコの高校で、ハーバード、シカゴ、ボストンカレッジ、ユニオン大学のアドミッションオフィスの担当者が来て、説明会があったのだ。その際、模擬アプリケーションを渡され、参加した親たちがアドミッションの担当者という設定で、誰を合格にするか、不合格にするか、ディスかションをしたのである。

「A子ちゃんは、確かにB子ちゃんよりも成績は少し悪いけれど、この子はどうやら片親だし、エッセイを読んでも、XXを勉強して、病気の母の役に立ちたいという気持ちがあるので、私はA子ちゃんを合格させたいと思う。」
「C男は、成績はひどいが、ボート部のキャプテンで州大会でも優勝している。しかも彼の父親は、医者だし、大学としても寄付金は大事ですからね・・・。」
などと、まことしやかに話し合い、最終的には皆で多数決で決めたのである。


さて、受験の過程に、面接があるが、一般的に面接は必ずしも受ける必要はない。面接を希望する場合は、大学を訪問した際や、大学側がカレッジフェア(大学説明会)として高校を訪れる際、または遠方の場合は、各地域別に大学を代表する人物がいて、面接を受けることができる。面接官の評価は、個人の主観によって差があるため、合否にはあまり影響はなく、逆にその大学に興味がある生徒が、大学について質問する場としても利用される。であるから、必ずしも面接を受けた大学を受験する必要もない。

その昔、私が日本の大学を受験した時、受験会場として大学を訪れたのが初めての大学訪問だった。その時に、「げっ、この大学、こんなボロいの・・・」とか思っても、時既に遅し。実際に入学した大学は、受験会場が別のところだったから、入学式で初めてその大学を訪れた。「ひぇ~、なんて辺鄙なところにあるねん!」と思ったものの、あとの祭りだった。
通常、アメリカの場合は、早い人で11年生になる前の夏休みあたりから、遅くとも12年生になる前の夏休みには、大学訪問をする。我家の場合も、11年生の春休みにようやく重い腰をあげて、車で行けるところの大学を、4校一度に見学した。

ちなみに、そのうちの1校は、全くの冷やかしのハーバード。ギフトショップでミーハーに、ハーバードグッズでも買おうかな~と、近くをうろついていたら、キニコの同級生に出くわした。「うちはTシャツを買いに・・・」っと、得意になって言いかけたら、キニコにぎろっと睨まれて、母は沈黙。父親と一緒だったその青年は、「UPennとジョージタウンとコロンビアと・・・」と一流大学ばかりを見て回っていたようだ。
この夏休みにも、2回に分けて、キニコと2人で、合計7校ほど訪れた。まともに見学ツアーに参加し、面接まで受けたところもあれば、チラッと見て、ここはもういっか・・・と去ったところもある。ある街中にある大学では、ツアーの途中で、「ねぇ、キニコ、あんたここで勉強できると思う?」と聞くと、
「・・・私もそう思ってた。」
「でしょ。こんな誘惑の多いところじゃ、絶対ダメやわ。時間の無駄だから、抜けようか?」と、ツアーの途中で脱落。
大学の申し込み時期は、早期と一般の2種類がある。早期の申込締切は11月1日~15日あたり、一般は1月1日~15日あたりというのが標準。合格発表は、早期が12月15~末、一般は3月半ば~4月半ば。
日本なら、早期=推薦入学ということで、合格確率が高い場合が多いが、アメリカの場合はあながちそうでもない。大学進学が加熱している昨今は、早く決まってストレスから解放されたいと望む「親子」が増え、早期申込者が増えて、競争率が高くなっていると言う。早期で取る生徒の人数は、大学によって差があるが、一説には3分の1とも言われている。
早期申し込みにも、幾つも種類があってややこしい。扱う種類は大学によって違う。主な種類は下記の3つ。

Early Decision
Early Action
Early Action 2

ひとつ目のEarly Decisionは、受験して合格したら、必ずこの学校に行かなければならない。つまり、1校しか受験できない。但し、ファイナンシャルエイドを申し込んでいる場合に、エイドの額が少ないと言う経済的な理由での辞退は許されている。

Early Actionは、受かっても必ず行く必要はないので、複数校受験できる。Early Action 2というのは、通常の早期より申し込み時期が遅く、1月1日まで。つまり、12年生の1学期の成績まで、SATももう少し遅い時期までの結果を送ることができる。1月1日は通常の申し込み期限とほぼ同じだが、発表が早い。受かっても必ずしも入学しなくてよい。

早期で受けた場合の、合否の種類も、合格、不合格のほかに、「延期」というのがある。つまり、早期での合格は認められなかったが、次回の一般受験者に加え、改めて合否を判定するというもの。但し、「延期」された場合に合格することはあまりないらしい。


ということで、わが娘のアプリケーションの話になるのだが、まず学業成績は平均がB。スポーツも、女子サッカー部のマネージャー、冬はアイスホッケークラブ(チームではない!)と、アスリートじゃないし、生徒会だとか、スピーチコンテストで華々しい成績を修めた、な~んてこともない。唯一書けるのは、一昨年の夏休みに中国で英語を教えるボランティアをした、今年の春休みにフロリダで、家のない人のために家を建てるHabita for Humanityのボランティアをした。(素人の子供が釘を打って建てた家なんて、怖くて住めないよ・・・まして、ハリケーンがしょっちゅうやってくるフロリダだぜ!)

望み薄とはわかっていながら、上記の「早く決まってストレスから解放されたいと望む親子」である私たちは、早期申し込みをしてしまったのですよね。

本当のことを言うと、大学の合否もさることながら、ファイナンシャルエイドが一体もらえるのかどうか、もらえたとしたらどのくらい出るのか、早く知りたかったのだ。望みを4月末まで持ち越したくなかったのだ。但し、一般の時期なら、「他校のエイドパッケージと比較して交渉も出来る」と言われたのだが、幾らなんでもその差が大幅に違うと言うことはなさそうに感じた。

キニコが申し込んだ大学は、合否が12月15日、合格した場合にはファイナンシャルエイドの見積もり額が12月末にはわかる。不合格になったらなったで、あきらめてくれるし、合格してもエイドの額が大幅に少なければ、あるいは出なければ、今後どの私学を受けても、内容は大差ないと思えるので、そこで、娘には現実を知って、早期にあきらめてもらいたい・・・そんな思いがあったのだ。

さて、キニコの運命やいかに。

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