シナコが散髪に行き、髪が短くなった。ちょっと長めのおかっぱ頭で、まさに「東洋人」という風情。キニコには、中国人みたいと言われている。
随分前から髪を切りたいと言っていたものの、なかなか行く機会がなかった。と言うのも、私は日本人の髪を切るなら、日本人(または韓国人)と頑なに思っているから。これはこれまでの幾多の悲しい経験に基づいている。アメリカで髪を切る度に何度後悔したことか。たいていは、お金を払って髪を切った後に、自分で切り直していた。
日本人の髪は上手に切らないと、ガタガタが目立つ。これがガイジンの髪だと不思議と上手く流れて、きれいに見えるのだ。アメリカ人が下手と言うより、日本人の髪質に慣れていない、髪質にあった技術と道具を持ち合わせていないと言うことだと思う。日本人が、アフリカ系の人の髪を上手に切れないのと同じだ。
オハイオ時代、最初のころは自分で切っていたが、後半は韓国人の美容師を見つけ、いつも彼女にお願いしていた。現在はマンハッタンの日本人美容師のA子さんにお願いしている。シナコも8ヶ月ほど前、春休みに一度行ったことがある。「切るなら、日本人に限る」とシナコにもずっと忠告して来た。
A子さんには幼稚園と小学生の子供がいるので、平日は日中、週末は土曜日しか仕事をしていない。シナコは平日は無理だし、土曜日はたいていクラブ、ピアノ、友達の誕生会など、予定が入っている。それでずーっと、文字通り「伸び伸び」になっていたのだ。
本人も痺れを切らしたのと、切った部分が「10インチ(25センチ)以上の長さなら寄付できる」と聞いて来て、一昨日、寄付を受け付けているモールの中にある美容院に今日こそは行くと言う。
「どうなっても知らないよ」と私。
「友達は上手だって言ってたもん」
「日本人の友達?」
「違うけど」
切った髪は、がん患者のためのカツラに使用される。寄付と言うアイデアには賛同するし、物は試しと連れて行った。もちろん美容師はボランティアではないので、10インチを切り取った後、カットをお願いすれば当然料金は発生する。
シナコの髪を担当したのはヒスパニック系の女性。最初に髪を束ねて、ゴムで止め、止めた状態で10インチ分を、ハサミでジョキジョキ。余り切れないハサミなのだろう。ゴムでとめて太くなっていることもあるが、長いことジョキジョキやっていた。シナコの髪質はそれほど太くないのに。
切り取ったゴムで止めた髪の束を横に置き、それから洗髪、カットとなった。
さて、仕上がりは・・・。
案の定である。前髪はかなりガタガタ。長い部分が後から落ちてきて、真ん中部分には急に短くなった凹んだ箇所。後ろは散切り状態・・・。
料金は40ドルなり。チップも入れて46ドル払った。
帰宅するなり、
「ママ~、お願い、なんとかして~。これじゃ、どこにも行けない!」
「ほ~ら、言ったでしょ、絶対こうなるって。言ったって聞かなかったでしょ」
「だって、寄付するなら、A子さんのところじゃ無理だったもん」
「それはそうだけど。これで、やっとわかったよね」
それから1時間ほどかけて、シナコの髪を調整した。
自分で言うのもナンだけど、私の腕は悪くない。2005年に日本に帰るまで、10年以上娘たちの髪を切って来たし、今でもキニコの髪は時々切る。さらに、道具もプロ級の物を持ってるのだ。今回、アメリカに来る直前、日本で行っていた美容院でお願いして、そこの業者さんから特別に買ったのだ。定価が一本25,000のハサミと、18,000のすきバサミ。割引セール中で、2本で2万円だった。このハサミだと、切っていても絶対に髪が逃げない。逃げないからまっすぐ切れる。
A子さんは一本5万円のハサミを使っていると言う。日本人は道具にもお金をかけているが、アメリカ人の同僚に話すと、何故道具にそんなにお金をかけるのか信じられないと言うらしい。恐らく、大して切れないハサミでもボロが出ない髪質なんでしょう。
1時間後、
「良かった~! ママ~、ありがとう!」
と、いつになく素直なシナコであった。
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