今度は顔までスカーフでぐるぐる覆って、アバヤの下に鞄を隠し持ち、アバヤの前の結び目を解いて重ね合わせ足元まで隠した(結んでいると足が少し見える)。スカーフの正しい巻き方を習っといたら良かった。どう見てもネイティブには見えない。
丁度、サウジ女性の団体が前を通りかかったのを見て、咄嗟にメイドを装うことを思いつき、彼女たちの後におずおずとピッタリ付いて従った。
大勢のムタワ(宗教警察)がいる入り口までやって来た。思わずメイドを装っている自分たちに笑いがこみ上げてきたが、笑っている場合ではない。万一見つかったらどうなるのかと不安になる。
でも何のお咎めもなく、すんなりと難関突破。やっぱり顔まで覆っている敬虔な者に特別な注意を払ったりはしないらしい。
ほっとしたのも束の間。会場の中にも大勢ムタワがいて、臆病な私らは、なかなか顔のスカーフが取れない。
前日のメンズデーに野球帽とジーパンをはいて、旦那と息子に紛れて行ったわよというフランス人の女性が、「ムタワはいないし、写真も取り放題」と言うてたのに。その言葉をまに受けて、私らは捕まったんやと、彼女を恨んでみる。
ライフスタイル(コンパウンドの刊行誌)に「サウジの伝統、文化を知る良い機会」とあったので張り切ってきたのに、中は人でごった返し、砂埃がもうもうとたちこめるばかり。大して見るものもない。確かに工芸品のデモ販売みたいなのはあるが、スークにでもある代物。値段も安くはない。お客もガイジンは少なく、ほとんどはサウジー。
30分ほどで見尽くし、路肩に腰を下ろした。迎えのバスまでには、まだ1時間はある。
「一体、これ何やのん?」
「なんで、こんなに人が集まるん?」
「サウジーが見ても面白いんやろか?」
「それにしても、何であの一家にだけハエがたかってたんやろ?」
私は広場で何を売るでもなく、固まって座っていたベドウィンの家族を思い出していた。その人たちにはハエがたくさん止まっていた。特に目の周りは、まるでオアシスに集まる動物がごとく。しかも驚いたのは、その誰一人もが、追い払おうとしないこと。
だいたい皆の周りに同じだけハエが飛んでいるならともかく、その一家だけと言うのも妙な話。
「砂漠にはお風呂ないもんねー」
「自分の匂いを大切にするから敢えて入らへんって聞いたよ」
「ほんまー??」
真偽のほどは不明。
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