清水由貴子の自殺で、介護の話もクローズアップされていると友人からメールが来た。
また別の友人からは、NHKの生活ほっとモーニング(平日毎朝)で、今は介護保険の企画を取り上げており、昨日は、認知症の妻が、寝たきりで人工透析をしなければならない夫を介護する(老老介護、認認介護)と、離婚して実家に帰ってきた一人娘が、働きながら認知症の母親を看る(シングル介護)についてやっていて、それぞれ壮絶だったとメールが来た。介護保険では、「家族と同居」の場合は、生活支援をしてくれないと言うのだ。
介護保険では、認定された介護度に応じて、「単位数」が割り当てられ、割り当てられた単位数の範囲で、サービスを受ければ、利用者の負担はその料金の1割となる。
具体的には、例えば義母の場合は「要介護1」なので、16580単位が割り当てられている。介護度が上がるたびに単位数は増え、要介護5なら35830単位。
「単位」で説明するより、実際の料金で説明したほうが分りやすいのだろうが、実は居住区により1単位の料金が変わる。都会では人件費が高いので割増しになり、1単位=100円にならず、106円とかに、変動するらしい。
16580単位と言うことは、1ヶ月約165800円までのサービスが受けられると言うこと。但し1割負担だから、割り当て単位を100%利用すれば、1割の16580円の利用料が発生する。
介護サービスは、身体介護と生活支援の二つに分類される。身体介護とは、利用者の身体に直接触れる介護で、排泄や入浴の介助など。生活支援とは掃除、洗濯、調理、買い物など。利用単位数は当然、身体介護のほうが高くなる。具体的には、身体介護は1時間408単位、生活支援は1時間208単位、デイサービスは1回700-800単位。
実際には、身体と生活のコンビネーションが多いし、夜や深夜は高くなるので、単位数は事細かに規定されている。ご興味のある方は、こちらをどうぞ。複雑すぎて、私は思わず閉じましたが。
http://www.osakakokuhoren.jp/in_kaigoN/pdf2006/SrveKaigo.pdf
で、最初に触れた同居家族がいる場合の話になる。
厚労省では、各都道府県に宛てた2007年12月20日の通達で、生活支援は基本的には「単身の世帯に属する利用者又ば家族若しくは親族と同居している利用者であって、当該家族等の障害、疾病等の理由により、当該利用者又は当該家族等が家事を行うことが困難であるものに対して行なわれる」が、「障害、疾病のほか、障害、疾病がない場合であっても、同様のやむを得ない事情により、家事が困難な場合に行われる」としている。さらに、「市町村においては、同居家族等の有無のみを判断基準として、一律に介護給付の支給の可否を機械的に判断しないようにされたい」と書いた。
では、何を持って「やむを得ない事情」とするのか。この解釈は、市町村によってばらつきがあるため、結局は実際に生活支援が必要な場合でも受けられない場合が多く、それだけ同居家族の負担が増している。
なぜ同居家族がいると受けられないかの理由は、そのサービスが利用者のためのサービスなのか、介護に関係のない家族の利便性のためのサービスなのか線引きが難しいからのようだ。例えばトイレ掃除。利用者がトイレを汚すため、トイレ掃除が必要だ。利用者専用のトイレなら話は別だが、通常トイレは同居家族も利用している。
もうひとつは国の資金。今はこうした「制約」があったり、介護保険の内容が一般には詳しく理解されていない。それでも既に介護保険は資金不足状態。制約がなくなり、皆がサービス内容に通じるようになったら、国債をどれだけ発行しても足りないんじゃないか。しかも、こんな少子高齢化に歯止めのかからない将来性の乏しい国の国債なんて、今後誰が買ってくれるのだろう。
介護保険以前は、家族が100%見なければならなかったことを思うと、保険が出来たこと自体は画期的なことだと思う。でも友人が、「結局、介護保険が『家族の介護ありき』を前提にした仕組みだから」と呟くように、子供にしても老人にしても「社会の子供」「社会の老人」と言う風には見なされていないのだ。
このまま行くと、誰も子供を産まなくなる。だって「産み損」なんだから。産めばそれだけ個人は制約を受ける。仕事もままならない。仕事をしていなければ、保育所も預かってくれない。24時間7日間、親だけで子供の世話をする。時間の制約のみならず、経済的な負担も大きい。教育費も家族だけが負担しなければならない。
また「子を産む」と言うことは「親になる」と言うことだ。親になると言うことは、子供に対して「介護の対象を造る」と言うことだ。苦労して大切なわが子を育てた結果、今度は自分たちはその大切なわが子の苦労の種になるのである。子供にそんな負担を強いるくらいなら、親にならないほうがいいと思う人が出てくるのは当然だろう。
こうして誰も子供を産まなくなり、この国からは誰もいなくなるのだ。
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