2010年4月16日金曜日

シナコの大学事情(10)

と言うことで、今日はヴァージニア州はウィリアムズバーグと言う歴史的にも重要な町に来ております。明日はこの町にあるウィリアム&メアリーと言う名の州立大学を見学予定。

ウィリアム&メアリーの創立は1693年で、ハーバードに次ぎアメリカで2番目に古い高等教育機関。ただし「大学」になったのは、ノースカロライナ州立大学に次いで2番目。

コネチカットからヴァージニアまでは、ずっとI-95を南下するのですが、このルートはいっつも混んでいて、今日も例に漏れずジョージワシントン橋の前で大渋滞、その後も随所で工事渋滞に自然渋滞。トラックは多いし、クルーズコントロールも長くは使えない。疲れました…。帰りはノースカロライナからだから、思っただけでもぞっとするよ。帰る日の夜7時には、シナコの高校で12年生の保護者会があり、卒業式やインターンシップの説明があるので、頑張って参加せねばなりません。

ところで、今まで大学名を伏せていましたが、色んな大学訪問をして、いろいろ興味深いことを発見。名前を伏せていたのでは、それらのお話を披露しても、何のことかもよくわからないので、この際実名で書く事にしました。

皮切りに行ったフォーダム大学はニューヨークはブロンクスのど真ん中。コイオを空港に送りに行く前に、シナコをドロップし、JFKでコイオを見送った後、私は再び大学に取って返しました。大学の周りは、片側にNY植物園と動物園が広がっていてきれいだけれど、反対側はまさにブロンクスと言った風情。少し前までマンハッタンは汚くて臭くて嫌いと言っていたシナコだから、この雰囲気はダメじゃないの…と思った。勿論キャンパス内は別世界だけれど。
フォーダムはイエズス会系の学校。教授陣も神父が多い。イエズスを全面に出している感じ。2年前にキニコと一緒に同じくイエズス会系のボストンカレッジを見に行ったけれど、あちらより宗教色が濃そう。どうやらボストンカレッジをライバル視しているようで、学長のお話も「ニューヨークは世界の首都と言われます。その世界の首都にあるフォーダム。あちらは、言ってもマサチューセッツ州の州都ですからね」だって。その学長自身がボストンカレッジ出身だったけど。

私が大学に着いたのは、丁度学長の話の時。その後は授業見学の予定だったが、「もういい。イエズス、イエズスし過ぎ。帰る」だって。と言うことでロスへの飛行機までは時間があるので、一旦家へ。

翌日は「あきらめる約束」で行ったUSC(南カリフォルニア大学)。学生の移動手段はスケボかこのビーチクルーザー。USCの学生の合言葉はVサインをかざしての"Fight on!" 

説明会に参加するや、あきらめるどころか、行きたい気持ちが増幅してしまったシナコ。ファイナンシャルエイドの説明会の終了後、説明者のところまで歩いていって、「父が帰国して収入が大幅に減ったのですが」とか相談している。
「いつから減収になるのですか?」
「一昨日帰国したばかりなので、これから」
「では、帰国後の会社から今年の年収を証明するものを得て、それを提出してください」

そんなもの提出して、中途半端にお金をくれると言われても困るんだけど…。そこで、会社からもらった見込み所得を書いた文書を添付して、「がめついとお思いになるでしょうが、我が家としてはあとXXドル無償の奨学金を頂かなければ、娘を貴校に行かせるのは無理です」と書いたメールを送った。かなりの額だから、きっとNOの返事が来るでしょう。…でも万が一YESの返事が来ると、それでも我が家の負担は大きいので、それが怖い。どうかNOと返事してください。

ところでUSCの合格者のオープンハウスは有料でした。生徒だけかと思いきや、親まで取られて、二人合わせて100ドルも払わされた。生徒にはUSCのTシャツをくれたので、
「え、親にはくれないの? 私だって50ドル払ったのに」と言ったら、横でシナコが
「ママ、やめて!」

100ドルは恐らく食事代。ケータリングを入れて、かなり立派なランチとディナーが用意されていました。ランチは親子一緒で、アドミッションオフィスのスタッフが各テーブルに着き質問に答えてくれる。最後にはUSCのバンドのパフォーマンス。この学校はフットボールが強いのでバンドにもかなり力が入っている。

ディナーの時は、子供たちは現役の学生と一緒にどこかで過ごし、私たちは教職員とテーブルに着いた。私の席にはたまたま生物の教授。その隣に息子がプリメッド志望というお母さん。(アメリカでは医大はなく、医学部は大学院のみ。医学大学院に進むためのコースがプリメッド)。

「息子はUSCとWestmontで悩んでいます。あちらからは奨学金を2万ドルもらうことになっているのです…」
それを聞いて思わず、
「息子さんが悩んでいるの? USCにした場合はどうされるの?」
「息子が 2万ドルのローンを組むことになるの」
「え? 息子さんは2万ドルのローンの意味がわかっているんですか? うちなんかローンの意味なんてわかってないから、幾らでもローン組むって言ってますよ」

生物の教授が、「先日医学雑誌にこんな記事がありました。今の30代~40代の医者は平均して12万ドルの学生ローンを抱えている。そしてみんな一様にこう言ってる。こんなことになるんだったら、医者になんかならなかったってね」

私は彼にUNCとUSCでは、生物を勉強すると言う意味でどう思いますかと尋ねた。シナコは生物か音楽を専攻したいと言っているから。「UNCは素晴らしい大学だ。文句ないよ。ただし州立とUSCの差は、教授へのアクセスにある。州立には大勢の生徒がいるから、なかなか教授とは話をしたりできない。私学は人数が少ない分、教授へのアクセスがしやすくなるから、お金に余裕があるならUSCの方がいい」

教授へのアクセスについては、リサーチユニバーシティーと呼ばれる一般の4年制大学は、実は私学であろうと教授へのアクセスはそれほど良くないと聞く。アイビーリーグなんかでは、教授は研究に大忙しで、大学院生の指導も大変。学部生にかまっている暇は無く、15分の面接に2週間以上前の予約が必要とか、ムチャクチャな話もあるそう。だからそう言う面からは、大学院のないリベラルアーツカレッジのほうが、教授の学生の面倒見は良いそうだ。

但しUSC曰く、USCだけは例外で、この大学は全教授が学部生を教えることが義務付けられている。何年か前にUSCのレベルアップを図るために、全米の大学から多くの教授を招き入れたそう。その時に「学部生を教えるのだったら嫌だ」と断った教授が何人かいたそう。「全教授が学部生を教える」がこの大学の売りであり、ユニークなところらしい。

そうそう、この学校には映画学部(Cinematic Arts)があるのだが、ジョージルーカスの寄付で非常に立派な建物と設備が整っていた。映画を勉強するには抜群の環境かも。

ロスから帰った翌日は、早起きして車で4時間はのコルゲート大学へ。コルゲートはNY州の山の中にあるリベラルアーツカレッジ。あの歯磨き粉のコルゲートにちなんだ名前と言うことを初めて知った。コルゲート大の前身の教育機関で学んだコルゲート氏は、その後石鹸の会社で財を成しこの学校に寄付した。後に彼の名にちなんで名称をマジソン大学からコルゲート大学に変更したとのこと。

しかし・・・本当に山の中の周りに何もない超田舎。私も案内の生徒に質問したけれど、説明会の参加者の質問も、「週末は何をして過ごすんですか???」
生徒は一様に「学校内で映画とか、誰かの公演(ダライラマやトニーブレアも来たそうな)、クラブのコンサートなど色んなイベントが用意されているから、退屈しません。この1年間で1度しか外出しませんでしたけど、全然平気」とか・・・。一番最寄の都市は、車で45分のシラキューズ。冬は雪深くて寒いし…。

しかし、この大学は見るからにリッチで学生もプレッピー。キニコが行っていたホッチキスを5倍にした感じ。建物も立派。景色も美しい。学生は大半は白人で持ち物にもお金が掛かってる風。こんな環境で勉強できるなんて羨ましい。…と言うより、贅沢って気がする。4年間ここにこもっていたら、世の中がこんな風だと思ってしまうんじゃ…。

授業内容などを聞くと、なかなか素晴らしそうではあった。海外カリキュラムも充実していて、学校が運営する1学期間の海外プログラムが22あり、全て教授の引率付き。短期のものも合わせれば6割の生徒が海外プログラムを利用している。素晴らしい!と、実は思わなかったんだな。確かに至れり尽くせり。だけど、同じ学校の学生が固まって教授まで一緒で、海外体験と言っても、アメリカを引きずっての体験でしょ・・・。確かにアメリカのカリキュラムに沿った勉強もできるし、指導者もいて、勉強の中身は充実した者になるだろうけれど、真の意味の海外体験じゃないよね・・・と、ひねくれた見方をしておりました。

さて、ここまで3校を見てきましたが、合格者のキャンパス訪問を通しての私の感想は、学生の獲得に各大学ともしのぎを削っていると言うこと。訪問者のほとんどは入学を決めかねている学生ばかり。どの大学も如何に我校が優れて魅力あるところか、それぞれの特徴を並べて宣伝します。そして必ず「売り」項目の中に海外プログラムが入っています。1年、半年、または休みを利用したプログラムで、リサーチの場合、授業を受ける場合やボランティア活動などがあります。

学校の特色を説明する例としては、これまでの卒業生のエピソードが上げられるけれど、たいていは「成功者」の話で、聞いている親の方は自分の子もそうなるかもと舞い上がるわけです。が、現実を考えると、実はそんな成功者はまれにしかいないのよね。

私は、何でも見るとすぐに「ここ、ええなぁー」と思ってしまったのだけど、しばらくして我に返ると、やっぱ無理。

シナコはコルゲートも気に入ったらしく、USCと合わせて候補に入れている。
無理だっちゅうに…。

2 件のコメント:

eri さんのコメント...

ウィリアムズバーグなつかしい!
I-95なくして私たちのアメリカ生活はなかったわ~。

大変ね、としか言いようがないんだけど、本当に大変だよね。日本もローンが少しは一般的になっているのか(まぁ、ケタが違うけど)、今回、ソフィアから来た学費納付書添付のレターの裏側が「こんな学生ローンがあります」一覧表だった。こんなこと、初めて(だと思う)。

Jodako さんのコメント...

そうだね。景気が悪いからローンというオプションも出来たのかなぁ。日本で奨学金と言えば私たちの時代には育成会(だっけ?)しかなかったけれど、奨学金と言うのもいろんな形で出てきたりしてるのかしら?